20年の時を経てリバ剣した元学生日本一の女性剣士。ジム経営では47都道府県、全国制覇を目指す(QOY合同会社 代表 / 鈴木 由香)

小田急線の経堂駅から徒歩1分ほどのところにある十坪ジム経堂には、実に色々な人が訪れます。運動神経を向上させたい小学生や、健康促進を目的とした高齢者、リハビリ患者、そしてプロのアスリート。もちろん強豪校に通う学生剣士も会員です。

十坪ジム経堂に置かれる機械は、東京大学の小林寛道教授が開発したもので、プロのアスリートも購入し自宅に置くほど。

学生時代に日本一になった経験を持つ鈴木代表は、剣道も仕事も最高の師と出会ってきました。本記事では、社会貢献を視野に入れた鈴木代表の剣道観や、コロナ禍でも衰えないジム人気の秘密、そして「良い縁を掴む人」について伺いました。

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プロフィール

鈴木 由香(すずき・ゆか)

1971年宮城県登米市出身。山形県立左沢高等学校を卒業後、東海大学に進学。大学院卒業後、生命保険会社に就職。その後、通信会社や機械メーカーを経て小林寛道スポーツ健身事務所に転職。その後独立しQOY合同会社を立ち上げる。

剣道は小学校6年生の時に始め、高校ではインターハイ準優勝、国体第一回少年少女大会で優勝、大学3年次には全日本女子学生で団体優勝し日本一に。大学院修了後20年剣道から離れていたが7年前に再開。現在は高橋海有八段が塾長を務める初音剣志塾所属。五段。

学生王者まで上り詰めるもバーンアウト。20年の時を経てリバ剣

──剣道歴について伺ってもよろしいでしょうか?

私が剣道を始めたのは小学校6年生。

国士舘大学の氏家道男先生(※1)のお父様である氏家良人先生が偶然同じ町内に住んでいらして、中学校までは良人先生に剣道を教えていただいていました。上段の名手と名高い千葉仁先生(※2)も良人先生の教え子だったんですよ。

※1:氏家道男…国士舘大学大学院教授。剣道範士八段。国士舘大学剣道部長。全日本学生選手権優勝、全日本選手権3位、全日本選抜剣道八段優勝大会準優勝など数々の戦績を残す。
※2:千葉仁…元警視庁警察官。剣道範士八段。全日本剣道選手権大会で3回優勝の記録を持つ。

高校は山形県にある左沢高校に進学し、齋藤学先生に師事しました。

剣道の打突部位は、面・小手・胴・突きの4箇所。でも、突きから小手にいくこともあれば、面から小手、小手から相手が竹刀を下げたところ面…など、何千パターンもあります。

先生は常々、こうおっしゃっていました。

「パターンを頭と身体に叩き込んで、技を出せ。中学剣道が四則計算だとしたら、高校剣道は二次関数だ」

──高校も大学も1年生からレギュラーだったと伺いました。

大学の時は、学校の方針もありました。育成のために1年生を必ず1人、レギュラーに入れていたんです。ありがたいことにその1人に選んでいただきました。大学でも剣道に没頭し、3年次には全日本女子学生で団体優勝しました。

でも、大学院2年生の寒稽古の最終日にアキレス腱を切ってしまい、それから20年、一度もやりませんでした。

──バーンアウトみたいなものでしょうか?

正にバーンアウトです。「私は普通の女の子に戻るんだ〜!!」と思っていました。

──アイドルみたいですね(笑)

そうですね、マイクじゃなくて竹刀を置いた(笑)

若い頃って様々なしがらみがきっかけで競技から離れてしまうことがあるじゃないですか。私もそれに近かったんですよね。

卒業後に勤めた第一生命は剣道関係なく入社したのですが、どこからか私が剣道をやっていたことが漏れて、名札が送られてきたことがありました。社内電話がかかってきて、「金融大会に一緒に出よう!」と誘っていただいたこともあります。

──学生王者にはぜひ入部してほしいですよね(笑)何がきっかけで再開なさったんですか?

殊衆の佐藤則子先輩です。先輩も子供の頃から強豪道場・強豪校で剣道を続けてきた方でした。病気が原因で大学を辞めてしまわれてたのですが、私より1年早く復帰していたんです。

「由香ちゃん、剣道しようよ。私も大変な思いをしたけど、剣道を再開して良かったって思ってるよ。何も背負わないところで、ただ『剣道』をしようよ」

先輩の言葉を聞いて、なぜだか分からないけど、涙が出て止まらなくなりました。

その時に初めて気づいたんです。私は剣道が、本当に好きだったんだって。

──20年ぶりの稽古はどうでしたか?

防具をつけたら身体がちゃんと反応して、驚きました。面をかぶり、内側のにおいを嗅いだ時、ダバダバーッとまた涙が出てきました。まるでお母さんのお腹のなかにいるような感覚です。私はずっと、この感覚を求めてたんじゃないかと思ったほどです。

──めちゃくちゃ剣道が好きだったんですね。

ね、好きだったんですよね。その時に、ようやく自分の気持ちに素直になれました。

自分の本当の気持ちを認めたら、今度は自分が剣道のご縁に生かされてきたことに気づけたんです。

剣道を再開してから、道場で子供たちと関わる機会も増えました。今は、剣道への恩返しの気持ちも込めて子供たちと接しています。

上から押し付ける指導をするのではなく、子供の打ち込み台になること。それくらいしかできないけれど、剣道界の役に立てるのであれば私は本望です。

──トップにいた方が言うと、深みがありますね。

勝ち負けの世界にいたからこそ思うのかもしれないです。いまは「剣道がこの社会にどう生かされていくか?」に興味があります。

勝つことよりも、靴を揃えるとか、道具を大事にするとか、そういうことに剣道をする本当の意味があると思うんです。

チャンピオンを目指す子供を育てるのと同じくらい、剣道が大好きな子供を増やすことも大切です。子供たちを支えることが、いまの私の社会的存在意義かもしれませんね。

生命保険会社で全国2位に。迷いながらも進み、人生の師に出会う

──第一生命から、どういう経緯で現在のお仕事を始めたのですか?

第一生命に入社した時は、まさにゼロからのスタートでした。剣道漬けだった女の子がいきなり社会の大海原に出た姿を想像してみてください。正直、途方に暮れました。

でもきっと、誠実に真面目にお客様に接していれば良い事があると、心の奥では信じていたんです。がむしゃらに頑張って、全国の新人営業の売上で2位になったんですよ!

──男性も女性も全部合わせてですか?!

はい。私、負けず嫌いなんですよね。人に負けるのが嫌なのではなく、とにかく自分に負けるのが嫌なんです。

でも、もともと保険が好きというわけでもなかったし、他の業界を見てみたい気持ちもあり、3年半ほど働いた後に転職しました。

転職先では2年働き、その後ちょっと休んでるんです。自分が何をしたくて、どう生きたいのか、分からなくなってしまって。

その後、大手通信会社で契約社員として働きました。2年ほど働いた時に「30代女性、営業経験があって体育大学出身、独身もしくはバツイチ」の条件での求人に出会いました。

それが、当ジムに置いてある機械の営業の仕事だったんです。

──ジムにある機械の販売がきっかけだったのですね!

はい、そうなんです。条件を見て「私しかいないじゃん!」と、すぐに応募しました(笑)2回の面接で一発OKをいただき、晴れてこの機械の営業をすることになったんです。

この時に出会ったのが、現在当ジムの専任顧問をしていただいている東京大学の名誉教授・小林寛道先生です。

私は大学院で「地区大会の一回戦で負ける選手と、全日本選手権で優勝する選手の体力差」について修士論文を書いたんです。筋力、スピード、ダッシュ力など全て測定しましたが、差は出ませんでした。

「答えが出ないことがこの論文の答え」として論文を提出したのですが、その話を小林先生にしたところ「僕は一秒で答えを出せるよ」と。

「剣道上位者は神経系が優れている。下位者は神経系が上手く働いていないだけ」

長年考えても出なかった答えを、たった一秒で出してしまったんです。この瞬間、「小林先生についていこう」と決意しました。

──そこから独立までの経緯は?

リーマンショックが起こる少し前に、会社からマシン事業のほぼ撤退を通達されたことがきっかけです。その時、寛道先生に「一緒に仕事をしよう」と誘っていただきました。

それまでの10年は迷うことばかりでした。きっと神様が「そろそろ良い先生の下で人生を見直しなさい」と言っていたのかもしれませんね。

そこから6年、寛道先生がオリンピックの関係で東大にお戻りになることをきっかけに、ジムを引き継ぐことになり、独立する流れになりました。

──人生において、迷うこともやはり大事ですか?

大事ですよ。やりたいことが分からなくなった時は、私みたいに一度仕事から離れてみてもいいかもしれませんね。すぐに答えは出なくても、腐らないでいれば必ず道は拓けます。

素直な心が良い出会いを引き寄せる

──先生に恵まれてきたのですね。

私には自慢できることが一つだけあります。

それは、『先生運』に恵まれていること。人生の要所で、必ず良い先生に出会ってきました。これだけは誰にも負けない強運だと思っています。本当に、今まで習った先生全てが超一流の方ばかりなんです。有り難いことです。

私は元来、孫悟空みたいな性格なんですよ。不甲斐ない私がきちんとできるように、神様が素晴らしい先生を私につけてくださっているんだと思います。神様に「その先生の下で修行しなさい」と言われている気がするんです。だから、有り難くその幸運をいただいております。

これまで導いてくださった先生がいなかったら、本当にパッパラパーな人間になってしまったと思います。

ご父兄の方から「どこで剣道を学んだらいいか」などと進路相談されたときは「出稽古や体験をして、ご自身が納得した先生の下で剣道をしてください」とお伝えしています。本当に、全て先生で変わるんですよ。良い先生のところで学べば良くなるし、ダメな先生の時はダメになる。

──才能があっても、良い出会いに恵まれる人と、そうでない人がいます。

当ジムには、社会的に成功されている会員さんも多いのですが、そういった方々がなぜ出世したのかを教えていただく機会が多々あります。彼らを具に見ていると、自分で上り詰めたというより「ポジションが勝手に飛び込んできた」という感じがしますね。

「この人だったら、上にあがらないとおかしい」と、周りに応援され、背中を押されて出世してきたんです。

大切なのは、素直であること。邪悪な心を持たず、素直になんでも受け取れる人は、どこまで伸びていくのか周りも見届けたくなるんですよ。だから応援される。

──いい循環がどんどん起こりそうですね。

自分の心が汚れていたら何にも上手くいかないはずです。私は幼い頃から「剣道は神事」と習ってきました。神棚がある道場で、神様が見ている前で技を磨く。「神様に誓って、その態度で大丈夫か?」と聞かれているのと同じだと思っています。

仕事も同じで、日々、稽古です。

下は小学生から上は高齢者まで。プロアスリートも通うジム

──会員はどれくらいいるのですか?

約200名ほどです。下は10歳から上は94歳まで。健康やリハビリのために通われている方もいれば、剣道の強豪校で活躍する選手やプロのアスリートもいますよ。競輪のプロ選手には、これまで70名ほど通っていただきました。

──どんなトレーニングをするんですか?

当ジムでは、小林寛道教授が開発した認知動作型トレーニングを使用して「体幹深部筋(ボディー・インナーマッスル)」を鍛えます。正しい身体の使い方を習得し、各々の目的の達成を目指します。

──普通のジムと、どのような違いがあるのですか?

一般的なジムは筋力トレーニングが中心ではないでしょうか。鉄板やバーベル、強力なチューブを用いて、身体に負荷をかけて行うものです。高齢者や高血圧、心疾患をお持ちの方にとっては危険度が高いことがあります。

認知動作型トレーニングは、最先端の運動科学に基づいたマシンを用いているので、負荷をかけず質の高い身体の使い方を習得可能です。

ドクターストップがかかっていない方で小学校5年生以上の年齢であれば原則、どなたでもトレーニングできます。

代表的な認知動作型トレーニングマシンは、こちらのスプリントトレーニングマシンですね。カール・ルイスの走りを分析し開発されたトレーニングマシンで、走る競技者の間では『神のマシン』と呼ばれるほど有名です。

正しい動作でトレーニングを続けていくと、必要な筋肉が太くなるので身体全体が強くなります。深部の筋肉を強くすることでスポーツ能力を向上させるのです。さらに、正しい動作を身につけることで怪我の予防にも大いに役立ちます。

──高校生・大学生の剣士は身体の成長変化や稽古量の多さからか、怪我が多いですよね。

ハードな稽古をするならば、体のケアは必須です。怪我をしてから治療するよりも、そもそも怪我をしにくい身体をつくることが大切ですね。怪我をしなければ継続して稽古ができるので、試合に勝つ確率も高まります。

筋力系のトレーニングをするにしても、まずはよく伸び縮みする身体を作る必要があります。身体がかたい状態でパワー系のトレーニングをすると、身体はもっと縮みます。可動域が狭いから、身体を大きく使えないんです。体を大きく使える人は、いくらでも小さく使えますが、小さくしか使えない人は大きく動かすことができません。

だから、体を柔らかくすることはとても大切なんです。でも、「柔軟は嫌い。痛いから嫌」という方が多くいらっしゃいます。また、自分の体はバキバキに硬いのに、現場で子供たちに柔軟を強要する指導者が散見されます。実は、痛い柔軟は逆効果。なぜ痛い柔軟が逆効果なのかを少し説明しますね。

「痛い」と言う信号は、脳が拒否している信号なのをご存じでしょうか?

痛くなるまで柔軟をすると、脳はこれ以上筋肉を伸ばすと切れるからやめて、と言う指令を出して、筋肉を縮めてしまいます。

それを『伸長反射』というのですが、伸ばしたいのに縮まる。これ矛盾してますよね。

実は伸長反射が起きる手前で止めて、あ〜気持ちいいな、と思うところで柔軟やストレッチを行うことは、とても大切な『トレーニング』の一つなんです。

痛くなる手前で止める柔軟であれば気持ち良く体を伸ばすことが簡単にできますし、慣れれば痛みなく可動域も広がり、怪我の予防にもつながるので、痛くない柔軟、ぜひ積極的に行っていただきたいです。

方法がわからない方は、剣縁で見ました、柔軟教えてください、と十坪ジム経堂のホームページからお問い合わせください。当ジムのマシンを使うと、痛みなく簡単に柔軟性を高めることができます(※)

※ 編集部追記:剣縁の取材時もマシンを使わせていただきましたが、驚くほど簡単に柔軟性が高まりました!

──剣道にも柔軟性が大切なのでしょうか?

ええ、もちろん。柔軟性を高め可動域を広げることで、一歩当たりのストライド(歩幅)が伸びるので、遠間から打てるようになります。

ちなみに、剣道をしていると「あいつは体幹が強い」なんて言葉がよく出てきますが、そもそも体幹とは何かご存知ですか?

──改めて聞かれると、よく分かりません…。

体幹は頭、肩甲骨、鎖骨、手足を取って残った卵型の胴体の部分です。インナーマッスルは、骨盤の中やお腹の中、背骨の際、肩甲骨の奥などにあります。

体幹が強い=筋肉が強いとお考えの方が多くいらっしゃいますが、それは適切な答えではありません。

体幹が強い=どんな体勢からでも立ち位置にすぐ戻せる、柳のようなしなやかな身体を持っている方なんです。

いわゆる振り戻し能力が高いので、どんな体勢からでもスッと起き上がることができます。

振り戻すためには、お腹を固めるとそのまま倒れますので、お腹や背中をいつも柔らかく使う必要があります。

例えば、小手を打って崩されてもすぐに構えられる子は、起き上がりこぶしのように体がしなっている子。すぐに構え体勢を整えることで、打ったあとに面を打たれません。

ちなみに、かかり稽古は体幹を鍛えるのに最適なトレーニングなんですよ。先生に転ばされてもすぐに構える訓練をすることで、身体の深部にある筋肉がしなやかに、強くなります。

──剣道は、インナーマッスルを鍛えられるんですね。

ええ、鍛えられます。さらにいうと、稽古前の雑巾掛けでも鍛えられる。

雑巾掛けは100mのスタートダッシュの要素が全部入っているんです。雑巾掛けをするときは、骨盤を回転させて、背骨をくねらせて肩甲骨と連動させます。だから股関節も使うんです。

道場は綺麗になるし、足腰の粘りは尽くし、跳べるようになる。良いことづくしです。

──剣道にはやはり、神経系も大事ですか?

大事です。剣道は極論、打ちたいところに竹刀の3分の1が届けば良い。竹刀操作は指先でしますよね。自分が狙った場所に竹刀が届くように、どうやって腕を伸ばし、指を使ったらいいのか、どういう腰の使い方をしたらいいのか、常に考え、イメージした動きを実現することが大切です。

剣道に限らず、どんなスポーツにもコツがあります。神経系をトレーニングして、自分の運びたいところに腕や足を運ぶ。それが強さと巧さにつながります。

ジム経営も全国制覇を目指す。中堅世代として剣道界への貢献も

──今後の展望をお聞かせいただけますか?

ジムでも全国制覇したいですね。まずは東京でしっかり活動して、最終的には47都道府県にジムを作りたいです。

剣道に関しても、何かしら恩返しをしたいです。剣道も柔道も空手も、人間の教育に必要だったから残ってきたはず。私たちは、その文化の継承をしていく必要があると思うんです。

──鈴木さんのようにバーンアウトしそうな学生がいたら何と声をかけますか。

「一度剣道から離れて、遠くから眺めてみてごらん」と伝えたいです。一度離れると、良さがわかります。迷ったり、嫌になりそうな時は、ぜひ環境を変えてみてほしい。だって、剣道自体に罪があるわけじゃないから。

大人になると、「剣道」を軸に色々な方と関われます。職業も生い立ちも違う人たちと剣を交えることができるんです。だから、じっくり長く続けてほしい。強い人が偉いんじゃない。剣道を好きで一生懸命稽古している剣士を大切にしないと、剣道の発展や文化の継承にはならないと思うんですよね。

そしてリバ剣して思うのは、剣道は本当に、楽しいってこと!これからも色々な人と出会って、剣道を続けていきたいです。

──リバ剣までのお話、そして最新のトレーニングのお話、どれも面白かったです。本日はありがとうございました!

個人会員特典

店舗名十坪ジム経堂
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