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母になったことで拓けた新たな天職への道。結婚相談で人を育てる(松村愛子/結婚相談所Serenemariage 代表)

剣道経験がまったくない剣縁法人会員が初めて誕生しました。仕事の繋がりで剣道家と出会い、その人の発言に感動したり剣道に関する話題に触れるうちに、自分が結婚相談に感じるやりがいと剣道が「人を育てる」ことを目的にしていることに共通点を見出し、剣道家を応援したいと思われたそう。「意図せず人生を賭けるものをもうひとつ見つけちゃったかも(笑)」ともおっしゃっており、どうやら剣道を始める気も満々のようです。そんな松村さんに、結婚相談所を始めたいきさつや人の成長について思うことなどを話していただきました。

プロフィール

松村愛子(まつむら・あいこ) 1974年10月10日石川県志賀町生まれ、東京都国立市育ち。大学卒業後は商社に就職するも1年で退職してファッションデザイナーの道へ進み、第一の天職として没頭。出産を機に軸足を知育玩具の企画販売(ブランド名:Apricity)に移し現在も事業として継続。2024年2月に株式会社IBJ(東証プライム上場)の正規加盟店として結婚相談所 Serenemariage(セレナマリアージュ)を開業し、カウンセラーとして現場に立つ。第二の天職として会員の婚活を通じた成長を明るく穏やかに支援中。

結婚相談所 Serenemariage(セレナマリアージュ)
https://www.serenemariage.com/

仕事を通じて繋がった剣道家との縁。
剣道って人間を育てるものなんだなと思った

― 剣道未経験者が剣縁の法人会員になられるのは初めてです。剣道とはどんな縁なのでしょう?

今日、『バカボンド』を持ってきたんですけど、私が子どもに読ませたいなと思ってるマンガのひとつなんです。で、バカボンドがどうこうっていうのは後付けなんですけど(笑)、デザイナーの仕事で剣道を真剣にやってる人とたまたま繋がっていて、めちゃくちゃストイックに、それも長年ずっと取り組んでいることを単純にすごいなと思ってたんですね。さらに、昇段するのに単にいま強いというだけではダメで、段が上がるほど修行期間が長くなるって話を聞いたときに、剣道って人間を育てるものなんだなと思ったんです。目的が勝敗じゃない。一般的にスポーツでもそういう言い方はするし、剣道にだって勝敗にこだわる場面はあるはずだけれども、最初から仕組みとして目的をそこに置いてないんだなということにすごく感動したんです。それで、そういうことに真剣に向き合っている人たちと私なりに関わりが持てて、必要なときにサポートできるようになれたらいいなと。

実は私も剣道を始めようかと思ってるんですよ。子どもにそのことを話して誘ったら、普段は「そういうの、私はいいから」って言うのに、「いいかも」って。さらに会社のパートさんにも声をかけて、彼女も3歳か4歳の息子さんと一緒に始めそうな気配が出てきていて。既に身の回りで輪が広がっております(笑)。

私はもうどこで体験させてもらうかの見当はつけたんですけど、パートさんの方は住んでいるのが川崎なので、川崎であまりハードルが高くなく始められる場所があれば紹介してほしいです。

松村さんが企画・販売する知育玩具(ブランド名:Apricity)のひとつ、工作キット(ラジコン、ソーラーカー)。
これは製作にライターを使う玩具なので大人の見守りが必要。
大人がやってしまいたくなる玩具だが、「子供が自分で試してほしい。大人が代わりにやり切ってしまうのはダメ(笑)」。

自分中心の世界から子ども中心の世界に変わった。
天職だと思って没頭していたデザイナーから知育玩具へ

― もともとのキャリアはレディースファッションのデザイナーなんですよね?

そうです。モノを作る仕事がしたいなと思って、洋服が好きだったのでデザイナーになったんです。まあ楽しい仕事で、天職だと思って没頭してたんですけど、出産というのがすごく大きな転機になって。自分中心だった世界が子ども中心に変わっていくんですけど、思いどおりにならないことがほとんどなんですよ。当たり前なんですけど、子どもは自分と別人格ですし、だけど自分の体から出てきてるから、なんとなく自分と一緒だってこっちは思ってるんですよね。ところが自分とは違うんだって時間をかけて知っていく中で、自分が子どもに対してできることって、極端な言い方をすると衣食住の提供だけだなって、安心できる場所を提供してこの子が強く逞しく育っていくのを見守るくらいなんだなってすごく感じたんです。

デザイナーという仕事をしながら母親業をするのは結構しんどくて、「この子にとってこのままではまずいんじゃないか」と思っていたときに、アメリカにいる友人が出産祝いで送ってくれた知育玩具がとても素敵なもので。日本にはないもので、「なんでこんなにいいものが日本にはないんだろう?」ってアメリカの友人に話すと、「じゃあ日本で売ろうよ」と。彼女にアドバイスをもらいながらその知育玩具の会社にアプローチすると、日本での独占取引が決まり、デザイナーの仕事をメインに副業で知育玩具をAmazonで売るようになったんです。

― アメリカの知育玩具のどういうところに惹かれたんですか?

子育ての価値観がまったく違うんです。アメリカの会社とヤリトリをしていくうちに、そういうことがわかってきたんです。例えば、取扱説明書を日本語訳して作るんですけど、細かいところがないんです。行間がすごく空いちゃうという感じ。アメリカの会社に「この過程はどうするの?」って聞くと、「ここはキッズが考えるところだから。なぜ日本人はそんなに正解がほしいんだ?」って。

それって実験キットの話だったんですけど、実験なんだから失敗があって当然なんだと。自分で予測を立てる、例えば、青色になるだろうと思ってやったら赤色になった。そこで青色にする方法を大人が教えてどうするんだって。だから、結局その子がずっと赤色しか出せなくても、それが経験だし、どこかで「あのときのあれは、あれが間違いだったのか」って気づいたり、「あれ、こうやってみたらいいかな」とか。それを育てるのが僕らの仕事でしょみたいな。だから、何と何を何グラム足したら青くなりますなんて書いたら、「あ、そうですか」で終わっちゃうじゃないかって話。

日本だと小学校受験や中学校受験に向けて様々に取り組むご家庭が多いので、どうしても受験とか学校の科目に対して必要なものが売れるんです。それはそれで必要だったりしますけど、アメリカは算数ブロックみたいにちびっ子が視覚的・感覚的に学んでいくようなプロセスが好きですね。日本ではペーパーでやった方がいいとされていることを、アメリカは視覚的・感覚的に掴ませるのが得意というか大好き。そんな違いがありますね。

知育玩具の人気商品たち。
一番人気はテトリス風3Dパズル。右手前のシャンプーとボディソープも、実は知育玩具のアンケートから生まれた。
「知育玩具メーカーを目指してたわけじゃないので楽しければいい」と笑う。「ボトル製作では剣道家の方に助けられた」とも。

ただ、アメリカとそんなヤリトリをしている間にコロナになって、そのアメリカの会社が潰れちゃったんです。でも商品自体はいいものなので、オリジナル商品として作るようになっていくんですけど、子育て観として、“自分で試してみる”というものを売っていきたいなと思って、木製の組み立てキットとか、そういう子どもが自分で作るものを増やしていくようになりました。

― すごく手軽に楽しめるように思います。夏休みの自由研究なんかにもってこいですよね。

そうなんです。毎年夏休みの自由研究でよく売れます(笑)。

ただ、ここ数年問い合わせが何倍にも増えてきたんですよ。お母さんからの問い合わせが。
その問い合わせの内容というのが、例えば電気実験セットというのがあって、レモンを電池にするとか直列と並列はどっちが明るいか?とか発電機とかもあっていろんな実験の中から自分で好きな実験をやってみなよ!という感じのものなんですけど、こういう実験があるよというのは取扱説明書に書いていて、答えも書かざる得ないんですけど、「ウチの子の自由研究にはこれがいいと思ってやらせたんだけど、取扱説明書とは違う結果になった。どうすればいいですか?」ってお母さんが聞いてくる。私は、「僕、この1ヶ月で答えを出せなかったけど、なんでだろ?」でもいいと思ってるんです。「どうしてかな?」って、もしかしたら何年も考えて、いつか「あれか!」とかね。自分が母親として考えると、考えさせることを常に提供していきたいなって思いなんですけど、でも親は完成させたい、100点満点でないと嫌なんでしょうね。先生がそういうのを求めるのかもしれませんけど。用意した答えを子どもにやらせたいって親が増えてるんだなと思うとちょっと悲しい。

もっといろんなことで社会に貢献したい。
第二の天職・結婚相談所

そんなことをしているうちに、だんだん社会貢献っていう気持ちが大きくなってきたんですよね。
子どもといると、当たり前ですけど「人に優しくしなさい」とか「困ってる人を助けましょう」といった道徳的なことにすごく触れるじゃないですか。その中で、「私はやってる?」って思うこともあるし、公園で「お友だちと仲良くしなさい」って言ったら「お友だちじゃない」って子どもから返答されてハッとしたりする。子どもが小さい頃って、親は、知らない子のことも“お友だち”って言うんですよね。大人が“いい子”の枠を作って押し付けてるなと思ったりするわけです。子どもってピュアだから「ママやってないじゃん」とか「ママはあのときさぁ」とか平気で言ってきて、「あぁ、私という人間を見透かされてるなぁ」と思ったり。そうなると、子どもは私の仕事も見ているわけなので、何かもっとやれることはないかなと思っていたところ、障がい者福祉施設で働いている知り合いと話して、ウチの商品を検品して出荷してもらうようなスキームも作れた。

で、もっといろんなことで私が社会に役立てることをしたいなって思いが強くなって、そこでイーロン・マスクが何十年か後に日本が消えるみたいな話を耳にして、以前はまったく興味のなかった話なのに、でも子どもがいることで、「あ、この子の将来ってそういうことなんだな」って思ったんですね。仕事がすごく楽しくて、子どもとか全然興味ないって時期には、「楽しいことがあって、子どもができることでその楽しみがなくなっちゃう」と思ってたんですけど、本当はそうじゃなかったし、人生が豊かになって、人としても成長できたなって思えたから。

それに、別の剣道家の方が、奥様が病気になっていろいろと手伝っているときに、「自分のことをイクメンだと思ってたのに、そんなの本当に口先だけだった。実際にママの代わりをするってめちゃくちゃ大変だった」って言ってるのを聞いて感動したりして、なんだか結婚というところで私が介在して、男性に対しても女性に対しても、「こういう経験があるよ」とか「こういう風に私は思ってる」みたいなことを言うことで、二人の関係がステップアップじゃないけど、新しいところを見たり話し合ったりするキッカケになればいいなと。

一緒に仕事をしてるパートさんがママなので、「やっぱり女の人が言わない限り男の人は気づかないよね」なんて話をよくするんですけど、気づくわけないんですよ。女の人もそうですよ。例えば男の人が専業主婦に「仕事大変なんだよ」とか言っても、大変だろうなとは思うけど、何がどう大変なのかは絶対にわからないんですよ。だから、わからないことをわかってもらうというよりも、まぁ想像できるくらいに言語化できる経験者がお節介してもいいかもね、っていうのは思いました。

あとは、単純にオメデトウの世界じゃないですか。それがいいなと思ったんです。ハッピーエンドで終わる場所なので、めちゃくちゃ幸せをもらえるなって。だから決して、誰かのためにという奉仕の気持ちだけじゃなくて、こっちもいただけるわけですよ。幸せのお裾分けを。会員さんに、「愛子さんと会って、私変わりました!」と言われたときはすごく嬉しかった。

― 母親になったことで、大きなうねりが起きたんですね。

まさかこんな風に繋がっていくとは思いませんでした。以前の私は、「結婚っていいものだけど、するしないはその人それぞれが決めること」と思ってましたから。だけど、結婚したいと思っているのにできないって人が多すぎるなと。昔は、おせっかいな(笑)親戚のおばちゃんが相手を探してくれたり、会社の上司が探してくれたりなんて時代もありましたが、いまはそれは許されない時代。本当に社会に出ると出会いがないと悩む方って多いんですよ。

― 異性と付き合った経験がないという人の割合が随分高いと聞きました。

結婚したいけどできないと答える人たちの中で、男性は2.5人に1人、女性は4人に1人がお付き合いそのものをしたことがないというデータがあります。20代、30代ですよ。めちゃくちゃ多いって印象ですよね。その中で、お付き合いしたことがないという人たちが結婚したいと思っても、何をどこからどうしていいかわからないし、もっと言うと、デートの会話も場所も、服装も、何もかも不安なんですよ。本当にこれでいいんだろうか…って。でも、そりゃあ親には聞けないですよね。それと、恋愛結婚にはおよそ4~5年かかると言われてる。そうすると、30歳で結婚してるってことは24~25歳で出会ってるわけですよね。20代のうちに結婚したいと思ったら学生時代の彼氏とじゃないと結婚に至ってないという数字ですよ。もちろん、恋愛事情とか結婚事情というのは本当に人それぞれなので、その数字だけで語れるものではないです。でも全体の数字があまりにも大きいので、そこに対して「いやいや人それぞれだから」とは言い切れないものはある。ただ、「恋愛経験がないから私は結婚できないんじゃないか」とか「人に出会えるんでしょうか」と言う方に、安心材料として「あなただけじゃないよ」というのは伝えてます。「ただ、だからといって頑張らなきゃいけないことはいっぱいあるよ」ってのはありますけどね。まぁ、それは恋愛経験の有無に関係ないですけどね(笑)。

― 結婚相談所に来る人は俗っぽい言い方でいうモテない人という括りじゃないですよね?

異性との付き合いに消極的というか経験のない方もいらっしゃいますし、恋愛経験もあるけど社会的なステータスが高くて相手に求める条件が厳しい人といった方もいらっしゃいますけど、明らかに一番多いのは普通の方です。本当に、いままで何人かともお付き合いしてきて、タイミング悪くその人と結婚することはなかったとか、仕事が始まったらパタッと出会えなくなったというような方ですね。IT系とか研究職、工場勤務で、女性となかなか会えないし、仕事に集中している間に気づいたら5~6年経っちゃって、もう30歳になっちゃうからというような方です。その人自身に問題がなくても、単純に出会う環境がないから結婚に至れないっていう。

アプリもありますけど、アプリの場合は疑似恋愛をしてしまう傾向が強いようで、1年も2年も付き合って33歳とか34歳になるっていっても結婚話が一向に出ないことがよくあると聞きますから。相手に結婚する気持ちがあるかどうかを見極める冷静さが求められると思いますね。でも、結婚相談所にはお付き合いの期間のルールがあって、そしてカウンセラーつまり第三者が介在するので、そのルールに沿って、「そんなに決められないなら、もうお付き合いを止めなさい」と。「彼女の時間を盗むのは止めなさい」となるので、そういうルールの下で自分の気持ちを確かめながら進んでいくのは、自分で棚卸しながら生きていくというのと同じなので、私はすごくいいと思ってます。

実際のカウンセリング風景。
会員の本当の気持ちを引き出して伴走する。最初は人生を預かる責任感に震えたそう。

結婚相談も知育玩具も「自分で考える」キッカケづくり

― 普通の人に対してカウンセラーはどうアプローチしていくのでしょうか?

自分の気持ちがわからないという方が多いんです。男性も女性も。「ホントに結婚したいのか」とか「ホントにこの人が好きなのか」といったことがわからないって。だから、結婚したいから結婚相談所に来てるのは間違いないんですけど、「どうしたいのか?」必ず聴くんです。親がうるさいからとか世間が許さないからとか、家事をやってくれる女性がほしいからとか、とにかく聴くことでその方の結婚生活像が見えてくるんですよ。そうすると、こういう人が合うよっていうのが見えてくる。

だけど、「そういう人だと、あなたが結婚したいと思っている人にはならなくないですか?」ということもあるんですね。例えば、自立した女性がいいと思っているのに家事もやってほしいとか。「自立した女性は、家事をあなたのためだけにしないよ」とかいう話になるわけで、じゃあどっちが大事ですか?って。自分の長い人生を考えたときに、彼女といることの方が幸せだなって思える人に会いたいのか、自分のために働いてくれる女性に会いたいのか、どっちですか?となると、やっぱりそこで考えるわけですよね。それを考えて決めることが相手と擦り合わせていくときの自分の価値観になるので、それがブレたり迷ったりすると、相手を決められなくなっていくんですね。

― そこで、カウンセラーから「だったらこうだよね!」とは言えませんよね。

絶対に言えないです。
だけど面白いことに、自分の世話をしてほしいと思っている男性と話してても、話していくうちに、「あ、でも僕、よく考えたら家事も全部自分でできるんです。一人暮らしなんで」って言うんですよ。だから、家事をしてほしいわけじゃないってことに気づくんです。自分では「家事をしてくれる女性がいい」というワードを使ってますけど、ホッとできる人に会いたいだけなんです。その方は、家にいてくれてニコニコしてくれてる女性像を表現するのに「僕のために家事をしてくれる人」みたいな言い方をしちゃってるだけだったりするんです。で、「それだったら、家事ってことじゃなくて一緒にいてホッとできる人なんじゃないの?」みたいなな話をすると、「あ、そうかもですね」となる。
で、そうやって自分がチョイスしているワードが間違ってるとか、こういう人がいいと思っていることさえもが実は自分の本当の気持ちとは違っていることもあるので、そこは、私たちの結婚相談所で最初に時間をかけてやるんです。キックオフミーティングを適切なゴールを設定する場として重視しているのは、他の結婚相談所と大きく違うところだと思います。

― 最初に時間をかけるといっても、限度がありますよね?

それはあります。それに、あんまり長いと、こちらが説得していく形になっていっちゃう。それは本意ではないので、こうかなぁっていうふうに辿り着くような質問はしますけど、でも、婚活しながらでいいんです、自分の答えを見つけ出すのは。自分の気持ちも含めてやりながら変わっていくこともあるので。だから、「この前そういうふうに言ってたけど、今回のデートの話を聞いてると、こうじゃない?って私は思ったけど」とか言ったりすると、「あ、そうかもですね」みたいなこともあるし、「意外とこういうのをやってみたら楽しかった」とか、そういうことで「新しい扉を開いちゃったじゃん!」みたいなこともあるので、それは本当に走りながらですけど。

ただやっぱり、自分の気持ちって、十何年、何十年も自分で自分に言い聞かせてきちゃってる人が多いんです。
だから、私たちから「そんなことないんじゃない?」みたいなのはキッカケとして渡すんですけど、私たちにはこの人をこうしたいというのはないので、話しながら「そっち系?こっち系?」「で、どうする?」といった感じで、ボタンは用意しますけど「押すのはあなたね」というスタンスは変わらないし、一回で済ます話ではないので、毎月毎月面談するんですけど、そのときのフィードバックを聴きながらですね。

でも、だんだん面談も要らなくなってくるんです。自分でやるようになるので。
もちろんシステムとして管理する部分はあるんです。デートしたら入力とか、お相手のカウンセラーから「こういうことがちょっと不安とか言ってきてるけどどう?」とか、そういうヤリトリがあるので完全自走ではないですけど、自分を知ると自分のペースができて、自分の気持ちも処理できるようになってくるので、事務的な相談とか突発的な相談が来るくらいになる。毎週「面談お願いします」って長々とLINEが来てた人も、だんだんLINEが短くなり。逆に私のことを気遣ってくれるようになったりする(笑)。ベッタリで「何もできない」なんて言ってた人でも、3ヶ月とか半年すれば、もうあんまり私たちの手助けは要らないなみたいな感じになっていきます。

とても明るく快活な松村さん。天職というだけあって、聴く・話すのバランスが抜群。お母さん的でもありお姉さん的でもあり。

結婚相談は子育てと同じだと感じる。
会員さんとは運命共同体

― 成婚に向けたプロセスを見るというだけじゃなくて、人としての成長みたいなものも見てる。

そう、だからもうだと我が子だと思ってますから。会員さんは私の赤ちゃん!みたいな(笑)
赤ちゃんと言ったらおかしいですけど、でも、親にも言わないような話を聞くわけですよ。絶対に親には言わない話とか、もちろん兄弟姉妹とか親友にも言わないようなことを。。で、そういうふうになってくると運命共同体。絶対に成婚させてあげたいって思います。

― ビジネスライクに紹介業とか斡旋業という捉え方だと運命共同体なんて言葉は出てこないと思います。松村さんはビジネスというよりも、もう一歩踏み込んでいらっしゃる印象です。

本当に人生を預かるんですよ。
ぶっちゃけますけど、結婚相談所を始める前はそんなふうに思ってなくて、「幸せな場所だしいいな~」くらいの気持ちだったんです。それが、実際に始まると、本当に人生をお預かりするんです。就職とか仕事だったら転職という選択肢も比較的気軽に持てますけど、結婚は「離婚できるじゃん!」とは絶対に言わないし、思わないんですよね。こちらは。一生添い遂げたいなっていう人と結婚してほしいと思うし、本当に幸せになってほしいから。そうすると、本当に大変なところに携わってるなと思うんです。ちょっとピリッとしますよね。最初は「大変なことを始めてしまった」って責任感に震えましたけど、でもやっぱり、こうして一緒に走っていく中で、嬉しいなって思いますもん。チカラになれるし。

― お話を伺っていると、それほど葛藤なく結婚相談の世界に入ったように思いましたが。

結婚相談所を始めることについて、周りからは結構反対されたんですよ。「頑張りなよ」って言った人は一人もいない(笑)。でも私、打たれ強いんで。というか反対されればされるほど燃えるんで、「やってやる!」みたいなのはありました。それは仕事というかそういう部分での反動ですけど。みんな、「なんかワケのわからない、怪しいことを始めようとしてるな」って思ったんだと思います。ただそれは、結婚相談所というものの社会的地位がすごく低いんだなと思うんですよ。

実は、2023年の結婚組数の3%は結婚相談所で知り合ったカップルなんですよ。結構な数じゃないですか?私の周りには一人もいなくて、「うそでしょ!?」って思ったんですけどね(笑)。

いま20代の会員さんがすごく増えてるんです。なぜかというと、「タイパがいい」って言うんですよ。結婚にパフォーマンスを求める時代か!と思って、ちょっとびっくりしたんですけど、でも、いまの若者って自分の欲しいものがハッキリしてるんです。パフォーマンスという言い方だと相手に条件を求めるように聞こえますけど、そうじゃなくて、すごく精神的な部分を含めてこういう人がいいってハッキリ決めているので、いま付き合っている彼氏がいても、結婚相手としてはちょっと違うなってわかっちゃってるんですよね。「自分の仕事のキャリアを考えてこういう人に出会いたいんです」ってハッキリしてる。すごく大人ですよ。だから、こういう人がいいなというのが自分の中にあるので、結婚相談所だったら1年以内に結婚できるでしょって判断。

結婚って“ほんわか”したものって思ってませんでした?

もちろん彼らに“ほんわか”した気持ちがないわけじゃないんです。恋をしたいと思ってるし、相手を本当に好きになってからじゃないと結婚できないってなるんですけど、でもやっぱり自分が譲れないものがハッキリしていて、それは年収や身長みたいな条件じゃなかったりする。例えば、転勤がない人とか、私はこの仕事を続けたいからとか、自分は一人っ子だから両親の面倒をみることに理解のある人とか。別に援助してほしいって意味じゃなくて、それに対して理解がある人がいいとか。そういう自立した中でもものすごくハッキリしている。後々悩むことを先送りしない。そういうことを隠さないのもいいなって思うんですよね。「自分はこういう人間です。こういう家族がいます。あなたの家族を受け容れるし、私の家族も受け容れてほしい」っていうのを最初にちゃんと言えるのは勇気だし、相手を受け容れる懐の深さもあるので、そういうのはいいなって思います。

― 結婚相談所のイメージが変わりました。相談者の意思よりも相談所側のビジネス的な思惑が強く働く仕組みなんじゃないかと邪推していました。

そうじゃないです。
自分で決めることを求めるし、それに婚活ってせいぜい1~2年なんですよ。短い人だと半年くらいでご成婚。そんな短い期間に何十年って続く結婚を決めるわけですから、ここで決められないなんて、長い結婚生活、いろんなことを決めていかなきゃいけないのに無理じゃないですか。だから「自分で決めるチカラを持たなきゃいけないよ」って話はもちろんしますし、「こうやって決めてきたじゃん!」とも自信をもって感じてほしいし、で、決めてきたことを間違えたと思ったら、そこから離れればいい。それは別に失敗じゃないから。しかも、それをフォローしてくれるのがパートナーであるべきだし。重たいことだけれども、そんなに重たく考えなくてもいいなとも思いますよね。

先日、一旦休会したいと言ってきた女性の会員さんがいたんです。
私も、この会員さんは結婚というものに辿り着くにはもうちょっと時間が必要じゃないかと思ってたんですね。でも結婚相談所のシステムだと、出会いがあってデートを何回かしていったら「結婚したい気持ちは何%?」って聞かないわけにいかない。なので、そういうのじゃなくて、もう少しゆっくりと自分のペースでやれた方がいいし、それでやっぱり「結婚に辿り着かないな、辿り着きたいからまた戻ってみようかな」ってなる方がいいんじゃないかと思ってた矢先だったので、そのときに「その方がいいと思う」って言おうか迷ったんです。というか、言っちゃうことで、「私はそうなんだ」とも思ってほしくない。どっちでもいいし自分で決めたらいいけど・・・というのを上手く言うのにどうしたらいいかなって思ってて。彼女と「どうやって自分で休会って考えになった?」みたいな話をしてたときに、彼女が、「私、恋愛経験がまったくないからこういうことがしてみたいんです」ってウチの結婚相談所では認められないことを言ったんですね。だけど、それを言うのって勇気が要っただろうし、いいこと言うね!素晴らしい!って思ったんです。彼女とは何回も会ってきたけど、そのときが一番の笑顔だった。

それで私、なんだか憑きものが取れたような気持ちになって。カウンセラーとしては力不足だったかもしれないと思うけれども、長い人生を考えたときに、「あのとき私は一回区切りをつけて自分の人生を歩き始めたな」って彼女は思うと思うんですよ。遠回りが遅いってことじゃなくて、自分で気づいたことを「そうだ、これを機会にしてみよう!」っていうのが彼女のチカラでもあるし、この婚活をしたからこを辿り着いた本心だから。なんだか悲しいけれども嬉しい一日でしたね。

― 結婚相談所の商売としては残念ですけど、人生を預かるということでは成功事例かもしれませんね。

そう。だから私から「退会した方がいい」って言ったんです。休会だと気持ち的にここに残るから。ウチとしては休会の方がいいけど、手放してあげたくなって、「あなたのことを考えたら退会の方がいい。戻ってきたかったらでも戻ってくればいいじゃん」って。それを会社のパートさんに話したら、「愛子さ~ん、もうちょっとビジネスのこと考えましょうよ」って怒られましたけど(笑)。

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