「根がお節介だから」依頼者の安心・幸せのために奔走(藤井吉彦 / 藤井吉彦行政書士事務所 代表)

広島県福山市で行政書士事務所を経営する藤井吉彦さん。
専門性の高い仕事だからこそ、依頼者が感じやすい不安や疑問にはひと際の配慮を払います。
なおかつ、相談のあった依頼は基本的に断らない、というやや働きすぎの感もある藤井さん。
仕事に対するモチベーションを尋ねれば、「根がお節介だからかな」と笑います。
高校卒業後から離れていた剣道を復帰したのは40歳のとき。
その佇まいや語り口からは穏やかな人柄が伝わってきましたが、うかがった話の内容からは、仕事にも剣道にも向上心をもって向き合っていること、そして「あきらめない」という強い意思が感じられました。

プロフィール

藤井吉彦(ふじい・よしひこ)

1974年広島県生まれ。英数学館中学・高校(広島)を卒業後、広島修道大学に進学。大学卒業後、法務事務員として司法書士事務所に勤務。20年の経験を積んだ後、2020年10月に行政書士として独立開業。

剣道は小学生からスタートし、その後中学、高校と剣道部に所属。学生時代、社会人となってからしばらくは剣道から離れるも、お子さんがはじめるのと同時に再開。現在段位は三段で、四段取得を目標に稽古に励んでいる

藤井吉彦行政書士事務所

https://fukuyama-fujiigyousei.com

「3つの約束」を厳守して
不安や疑問を完全払拭

──行政書士という職業についてはその存在こそ知ってはいますが、不勉強で恐縮なのですが具体的にはどういったお仕事内容なのでしょうか? 

いえいえ、皆さん普通に生活しているぶんにはあんまり用がないですもんね(笑)。まず初めに言ってしまえば行政書士の業務は多岐にわたります。ですから「これこそ行政書士の仕事」とお伝えするのは難しいですが、僕自身の仕事で言えばいまは相続や後見などの業務がメインとなっています。

遺言書を作成したり、お年を召された方がもし自分が認知症になってしまった場合の後見人を指定する契約なども取り扱っています。認知症に限らず、年齢を重ねてたとえば足腰が弱ってしまって銀行に振り込みやお金をおろしにいけない、という方には誰かに代理で銀行に行ってもらえるようにする財産委任契約もありますし──と、まあ相続や後見などの業務の範疇だけでも多岐にわたることもあって、行政書士の先生方はご自身で専門分野を決めるケースが多いですね。

僕自身についてはまだ開業して間もないこともあって、お問い合わせいただいたお話についてはほとんどお断りしたことはありません。僕自身が経験値を高めていかなければならない時期なので、お手伝いできそうなことであれば僕自身も勉強をしながら。「これは経験を積めるいいチャンスをいただいたんだ」ととらえて、開業以来どんな仕事でもお受けさせていただきました。

いま開業から2年ほどが経ちましたが、おかげさまでいろいろな経験を積ませていただいたなかで、今後は相続や後見、外国人の方の入管業務、在留資格に関する業務、帰化申請業務などをメインにしていく方向で固まりつつあります。

──そちらを専門分野にしようと思った理由というのは?

多くの業務を経験したなかで感じたのはやはり「人に携わる仕事がしたい」ということでした。なにか人のためになる仕事をしたい、という発想があるからですね。

──今回いただいた藤井さんの名刺、趣味の剣道やキャンプの写真、愛犬の写真なども載っていてとても楽しいものですが、ここにも「3つのお約束」として「1 専門用語をできるだけ使わず分かりやすく丁寧に」、「2 最初にご案内した金額以上はいただきません」、「3 初回相談料は無料とさせていただきます」と依頼者目線からすると安心感を覚える文章が書いてありますね。

やっぱり法律用語は難しいし、制度自体も知らない方が多いですよね。実際に僕自身が当たり前と思っていることでもお客様にお話をしてみると「えー、そうなんですか!」と驚かれることはたくさんあります。

それに費用の面も不安を感じるのは当然のことです。ただでさえ皆さん不安を感じるから相談に来るのに、そこでまた新たにお金の部分で不安を感じさせることはできません。ですからご依頼自体も費用の面でご納得していただいた上でお受けしますし、相談料についてもいきなり最初からお金を取られるようであればそれは「相談に行くこと自体やめようか」という判断にもなりかねませんし。一度でもご相談に来ていただければ僕としてはだいたいが仕事にはつながりますから、そこで適正な価格をいただければいいと。だからまずは相談に来ていただくことが大事。そうすればこちらは「この人をなんとかしてあげられないものか」と必死で知恵を絞りますから。

──仕事は仕事と割り切って対応することも可能な、と言うか、それも当然のこととも思えるなか、なぜそれほどお客様に寄り添ったスタンスで接しているんでしょうか

うーん、それはもうただ単純に根がお節介というのか、昔から人から頼まれると断れない性格もあるのかな(笑)。だからいまも人からは「そんなのボランティアじゃん」と言われることもあるんですけどね(笑)。 僕もさっきは「そろそろ専門分野を固めて」なんて言いましたけど、お客様にはそんなことは気にせずになんでも相談して欲しいですね。もしかしたら同業者には「アイツは節操なくなんでもしよるな」なんて言われるかも知れないけれど、僕だってもちろん法律的な範疇のなかでしかお手伝いできませんから、そんな声は気にもしません。とにかく「お客様が幸せになればそれでいいや」って。

2020年に開業した清潔感のあるオフィスにて。
多岐にわたる依頼者からの悩みひとつひとつに藤井さんは誠実に向き合う(本人提供写真)

妻との何気ない会話が
独立するきっかけに

──藤井さんの「お節介」な人柄のルーツを探るべく(笑)、ぜひこれまでの経歴や剣道のお話もうかがえれば。もともとのご出身となると?

もうずっとこの広島県福山市で暮らしています。大学時代だけは広島市で一人暮らししていましたが、大学卒業間際に司法書士を目指そうと思い立って、卒業後はまた実家に戻って予備校通いをしていました。当時は岡山県の予備校に電車で1時間かけて通っていましたね。

──司法書士? 行政書士ではなかったんですね?

はい、僕は行政書士として独立する前はもう20年ほど司法書士事務所で事務員として勤務していました。事務所で働きながらずっと司法書士の勉強を続けていましたが、試験にはもう何度も落ちてしまって。その間に結婚もしましたし子どももできるしで「このままじゃいかんな……」と思っていたときに行政書士の試験に合格したんです。

行政書士を受けたきっかけは妻ですね。妻も僕と同じ法務事務員で、当時僕が勤務していた事務所の2軒隣の事務所で働いていたんです。その妻が行政書士の勉強をしていたのを見て、僕が勉強していた司法書士の試験と重なる部分もあったものですから、つい冗談半分で「俺は行政書士は受かる気がするな」と言ってしまった(笑)。そうなると妻も「それじゃあやってみいよ」となって、それで引き下がれなくなりまして(笑)。もう必死で勉強をして試験を受けたらなんとか合格できたんです。

ちょうどそんなときに当時勤務していた司法書士事務所の先生が「もう事務所をたたむ」と。先生はもうご高齢だったのでご自身では以前から考えていたことなのかもしれませんが、私からすると急な話だったので当時はずいぶん慌てたものでした。ですから行政書士としての独立は、誤解を恐れずに言えば否応なしの選択だったんです。

──そのような経緯で独立したならば、なおさら仕事に対するいまのスタンスに興味が湧きますね。ご本人は「お節介」を理由にされていましたけど。

そう言われると思い当たるのが、最後に勤務した司法書士事務所の先生で、その先生もつねにお客様のことを親身に考える先生でした。僕自身も先生には長くお世話になりましたから少なからず先生の影響もあるんだと思います。

ちなみに先生ですが、事務所を閉めたちょうどその一年後にお亡くなりになりました。僕自身は事務所をたたむのがあまりにも急だったことに当時は戸惑いを感じたものですが、いま思えば先生に急に亡くなられたほうがどれだけ大変だったことかと。もしかしたら先生はすでにご自身の死期を悟られていて、僕の背中を押してくれたのかもしれませんね。

──剣道との出会いとなるといつになるんでしょう?

それは小学2年生くらいのときに。僕の通っていた小学校の体育館を利用して剣道教室がやっていたのでそこに入会したんです。きっかけは家族からの勧めですね。とくに祖父が熱心だったようで、たしか剣道具も祖父が買い揃えてくれたような記憶があります。

僕が通ったのは中高一貫の私立学校でしたが、中学校でも剣道部に入って、高校時代も半分帰宅部のような部活動ではあったものの剣道部に入部しました。

大学にも剣道部はありましたが、体育会の剣道部と聞くとやはりどこか怖いイメージがあって、そこでは入部はせずに剣道から離れることになります。

社会人になってからもしばらく剣道とは無縁でいましたが、再開したのは40歳のときですね。僕には子どもが3人いるのですが、上の2人が男の子なんです。その2人がまだ小学生のときに、かつて僕が通った剣道教室が指導者の先生もそのままでずっと継続して活動しているのを知りました。そこに子どもたちをムリヤリ連れて行って入会させたワケですが、実は僕がまた剣道をやりたかったというのが本音でした(笑)。結局2人の子どもたちはどちらも中学受験をきっかけに剣道は辞めてしまって、いまとなっては僕一人が通っているような状況です。

──復帰にあたって、剣道に対して「キツい」とか「ツラい」とかいうネガティブなイメージはなかったんですね。

ないですね、剣道はずっと楽しかったです。子どもの頃の記憶でも、もちろん叩かれば痛かったけれど、仲間たちとも仲が良かったですし、楽しい思い出しかありませんでした。

そもそも僕が思うに、僕の通っているところは日本一優しい剣道教室。子どもの頃はもちろん、いま現在でもそれは変わっていなくて、先生が怒る場面なんてほとんど見たことがないんです。

だからウチの子どもたちにも言ったんですよ。子どもたちも小さい頃だとどうしてもふいに泣くような場面もありましたが、「お前たち、こんな優しい剣道教室で泣いているようだったらヨソではやっていけんぞ」って(笑)。

途中ブランクをはさみながらも再開した剣道。
現在は三段を取得している(本人提供写真)
オフィスの書棚には専門の書籍とともにこっそり剣道専門誌も並べられていた

仕事も剣道も実直に。
「目標があるからがんばれる」

──最後に、お仕事、そして剣道も、これからの展望などをうかがえれば。

実は、コロナ禍となり、そして自分自身の開業も重なっていまはなかなか思うように稽古には行けていない状況なんです。

僕は高校卒業時点で初段しか取れていなくて、それがずっと心残りで。だから剣道を再開したときにはどうしても二段に合格したかった。そして二段に受かれば今度は三段に合格したくて、三段に合格したいまは四段に合格したい。

四段に向けては、また基本的なところから学び直したいですね。自分の感覚としては、三段にはまだなんとなくの理解のままで合格してしまったところもあるので、もっと基本の再確認をして理解を深めたい。なんかこう、どうしても右手がいけない気がするんですよねえ……(笑)。

仕事については、いまは「つなぐテラスひろしま」という一般社団法人を立ち上げまして、そこで僕は専務理事を務めています。相続や後見などの制度自体がまだ周知されていないのが現状ですから、この一般社団法人を通じて無料のセミナーや無料相談会を開催しているんです。

──そこでも利益追求というよりボランティア的な活動なんですね。

とにかく皆さんにはまずは制度を知っていただいて、利益は最終的に戻ってくればいいかなと。……普通は業務を拡大したり事務所を大きくするのがおそらく行政書士の先生方が目指されるところだと思うんですが、僕のなかではちょっとまだフワフワしている部分があって。

──どういったことでしょう?

行政書士をやっていると司法書士のジャンルの業務にも出くわすんですが、そこでいつもジレンマを感じるんです、「ああ、司法書士の資格さえあればこの業務も僕がお手伝いできるのに」って。長年司法書士事務所に勤務していたので実務自体は分かる。あとは資格だけなんですよね。だからいまは司法書士の勉強も再開しようと考えています。

──司法書士、剣道四段とチャレンジを続けるんですね。

そう言われてみるとたしかに司法書士への心残りもまた剣道の段位審査と同じですね(笑)。やっぱり明確な目標があると人間はがんばれるのかもしれません。 剣道の段位にしてもそうでしたが、僕にとっては司法書士もまだ道の途中というか、合格できていないことがまだ心のどこかにひっかかっている。だからここであきらめることなく、挑戦を続けたいなと思います。

愛車のMINIクロスオーバー2015年式と。実は藤井さん、剣道と同じかそれ以上の車好きで、エンジン音や排気音を聞くだけでメーカーや車種が分かるという特技を持つ。行政書士の業務には車に関係する内容のものも多いため、それらはとくに楽しみに依頼を受けるという
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