紙のことならどんなご相談でも(加賀尾亮 / 株式会社ピーオーネット 代表取締役)

社名の由来は 「PAPER. OPERATION. NETWORK SERVICE.」の頭文字から。

加賀尾亮さんが代表取締役を務める株式会社ピーオーネットはその社名が示すとおり、紙を専門に扱う卸商です。

剣道は名門・早稲田大学で鍛えた経歴を持つ加賀尾さん。

大学剣道部在籍時に得た学びを活かしつつ、現在は社会環境、自然環境の変化を敏感にとらえ、紙が持つポテンシャルの発見・発信に力を注いでいます。

プロフィール

加賀尾亮(かがお・りょう)

1970年東京都生まれ。早稲田大学高等学院(東京)、早稲田大学出身。大学卒業後には兼松株式会社に勤務し、その後、家業でもあった株式会社ピーオーネットに入社。2016年同社代表取締役に就任する。剣道は小学3年時からはじめ、高校、大学と継続。兼松株式会社勤務時代も剣道部に所属し、全日本実業団大会への参戦経験もある。剣道四段。

株式会社ピーオーネット

http://www.ponet.jp/organization.html

意外に知られていない
“紙”でできる多くのこと

──現在加賀尾さんが代表取締役を務めておられる株式会社ピーオーネットの主な事業というのは?

 ひと言で言えば紙の卸商です。紙には洋紙もあれば和紙もありますが洋紙をメインに扱っています。「洋紙」と言ってもその種類は豊富で、私自身でも完全には把握できていないほどたくさんあるんです。そのなかでも大きく分ければ、名刺だったりノートだったり、あるいはパンフレットやチラシ、カタログなどに使うような紙など、我々はそれを印刷用紙と呼んでいるのですが、いわゆる商業印刷物に使うような紙をメインに取り扱っていて、それをお取引先である印刷会社様、出版社様などに納めています。

──「紙を納めている」と聞くとまず雑誌や小説などの本との関係が頭に浮かびますが、そのお話をうかがうと紙は日常生活のいろいろなところで利用されているんだなと改めて感じます。

 そうなんですよ。当社自体はあくまで材料屋、問屋という立場であってなにか商品をつくっているわけではありません。しかし現在、紙のマーケット的な部分で需要自体が減少傾向にあるなか、我々自身もまた紙の魅力や機能を改めて発信、アピールしていくことが必要なのではないかということを感じました。

 今回せっかくインタビューをしていただくということで、自分自身でも改めて「紙でできること」を見直してみたところ、まずは「書く」ことができる。それ以外にも「塗る」「飾る」「破る」「切る」「挟む」「折る」「重ねる」「束ねる」「包む」「巻く」「たたむ」、さらには「再生もできる」と。ざっと挙げただけでも紙にはこれだけの機能があるわけですが、実はこんなに多くのことができる素材というのは世の中にあまりないんだということに改めて気がつきました。

 先ほどもお話したとおり我々自体は問屋ということで商品はつくりはしませんが、それでもお取引先の業種が多岐にわたることもあって、紙に関することであればいろいろなご相談に乗れるのではないかと。たとえばお客様が「紙を使ってこういうことができないものか」と考えたときに私たちにお声がけいただければなにかしらのお返事はできるだろうと考えています。そのためにはまずは紙の可能性というか、紙の持つ機能を皆さんにお知らせしていく必要があると気がついたんですね。

──実際にそのアピール方法のひとつとして、過去にはラッピングバスを採用されたこともあるとか?

 お取引先様の業種としては、印刷会社様、出版社様もいれば広告代理店様、デザイン会社様もいます。それらの方々と紙のアピール方法について話し合いをしたときに出てきたアイディアがラッピングバスだったんです。

 時期はいまから5、6年前のことで、走行していた期間としては半年ほどでしたが、東京都北区にある王子駅を起点にして走るバスに弊社の広告をラッピング、多くの方々に見ていただくことができました。結果的にそのラッピングバスの発案から実現までがお取引先様たちとの関係の範囲のなかだけで完結できたことも、また改めて我々にできることの可能性が多岐にわたることも実感できた出来事でしたね。

 剣道にちなんだ話で言うとファイバー胴は紙製ですし、いまは折りたたみ式のヘルメットや担架などもファイバー胴と同じ素材でできているものがあります。一見特殊な分野と思われがちな紙ですが、生活や剣道の世界にだってすでに入り込んでいるんですよね。

清潔感あるオフィスにて。大学卒業、商社に勤務したあと自家が営んでいた株式会社ピーオーネットに入社。2016年から同社の代表取締役に就任した
会社のアピールとして、ラッピングバスを採用。半年ほどの期間、ピーオーネットの広告がラッピングされたバスが東京の街を走り抜けた

早大剣道部で過ごした時間がいまの自分のもととなっている

──ピーオーネットはもともとご実家が営まれていた会社だそうですね。加賀尾さんご自身のことについてもおうかがいしたいのですが、そもそも最初から現在の会社に入社したわけではなく?

 大学を卒業したあとは兼松株式会社に就職しました。会社選びについてはもともと「なにか商売をしたい」という希望はありつつも、当時はまだ学生ということもあって「この商売がいい」という明確な目標のようなものはありませんでした。それならばいろいろな商品を取り扱っている商社がいいだろうという判断から選択したんです。そこで知り合いの縁を頼ってみると、当時大学剣道部の先輩方が多く入社されていたのが兼松さんでした。

 勤務地は大阪府だったのでそちらで5年間勤めた頃に、東京にいる親から言われたのが「そろそろどうだ?」ということ。それで2000年3月に兼松を退職して、現在のピーオーネットに入社しました。

──加賀尾さんは名門の早稲田大学剣道部のご出身ですね。剣道自体はいつから、どのようなきっかけではじめたんですか?

 剣道をはじめたのは小学3年生のときでした。仲のいい友だちが「剣道をやる」というので彼についていくかたちで家の近くの警察署ではじめたんです。

 稽古自体は、もちろん体力的にキツいことはありましたが、それでもイヤだなという感覚は不思議と一度も感じたことはなくて、その後の中学校でも自然と剣道部に入部、淡々と続けてきたような感じです。

 高校は私立の早稲田大学高等学院に進学しましたが、入試の面接のときに剣道の経歴をアピールしたんです。いざ入学してみるとその情報がすでに剣道部には伝わっていて「加賀尾くんは剣道やっているんだよね?」と(笑)。

 高校剣道部は伝統もあってしっかりと稽古もしていたのですが、とくに剣道推薦などもない学校だったので特別な戦績に恵まれたということはありませんでした。しかし、それでも当時指導をいただいたのは早大の師範も務められた矢野尊之先生(教士八段)で、矢野先生や当時の先輩方の存在がなければその後に早大の剣道部に入部することはありませんでしたし、いまの自分の人生はなかったでしょうね。

 大学時代を振り返ると、私自身はあまり真面目ではない剣道部員だったと思います。しかしそれでも4年間部活を続けられたのは、当時の先生方、先輩方に温かい目で見守っていただいたからですね。

 学生時代には大会結果ではこれといった成果はありませんが、強く記憶に残っているのは我々が4年生になったときに練習時の学年の並び順を変えたこと。準備体操や素振りのときには1年生が一番前でその後ろに上級生が並んでいたのですが、それを4年生が一番前に並ぶようにしたんです。

──後ろのほうに並べば自然と指導者の目も届きづらいというか、緊張感が薄れがちですよね。

 そうですよね。だからこそあえて4年生から順に前から並ぼうと。当時の剣道部の「上級生だからといって先輩風を吹かせるのは良くない」という古い慣習にとらわれない雰囲気が私にとっては居心地が良かったですし、そういう剣道部の気質はいまも自分のなかに強く残っています。

──大学卒業後は?

 兼松でも剣道部に所属して全日本実業団大会などにも出場しましたが、いまの会社に勤めるようになってからは仕事もバタバタしたこともあって剣道からは離れてしまいました。周囲の方々が長く剣道を楽しまれている姿を目にすると「やっぱりいいな」と思いはするのですが、いざ自分自身が復帰するというのはまだちょっと決めかねている状態ですね。

 それでも母校の早大剣道部のことはずっと気にはなっていて、いまでも早慶戦などは応援に行ったりしているんです。それだけ私にとってはやはり剣道は大切なもの。剣道で得た縁こそがいまの自分の人生をかたどってきたものですから。

──それでは最後になりますが、今回のインタビューにあたってご準備していただいた資料があるとか?

 「紙の良さを発信する」という発想から、SDGs(持続可能な開発目標)にならって、当社の取り組みをSDGs が掲げる17の目標に当てはめてみたんです(ページ下部に掲載)。

 具体的な項目に当社の取り組みを当てはめて考えてみれば、また私自身も気がついていなかった新たな発見がありました。紙は環境にも配慮された優れた素材であること、そして当社の取り組みは大きな社会課題を解決する一助になり得ることなどが分かるようになりました。あまり大きなことは言えませんが、紙と私たちにできることはまだまだあるとどこか誇らしい気持ちになりました。

早稲田大学高等学院、早稲田大学と剣道部に所属。青春時代は剣道とともに過ごした
兼松株式会社勤務時代は実業団剣士として活動。全商社大会での個人戦優勝経験もある(写真前列左から3人目が加賀尾さん)

SDGsの観点からみた当社の取り組み

紙の特性

紙はサステナブルな商品であると同時に環境に配慮された循環型素材。

紙の原料は木。紙は自然の恵みを効率的に利用すると同時に地球環境と共存しながら作られている。木は成長する過程で二酸化炭素を吸収することで温室効果ガス削減に寄与。

吸収された二酸化炭素は木の体内に固定化され、その繊維は紙の原料に。

そして、使用後の紙は古紙として回収され、再び紙に戻る。焼却されても、カーボンニュートラルの考え方から、二酸化炭素の増加にはつながらず、自然界に放置されても、いずれ分解し土へと戻る。紙を効果的に使うことは、温暖化や、廃棄物、マイクロプラスチックによる海洋汚染などの諸問題に対する一助となるものと考えている。 当社は、この社会課題を解決する役割の一部を担っている。

1.「紙」という持続可能な素材を社会に提供。

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・森林認証紙(FSC®)の販売活動を通じて森林認証制度の啓発活動を実施。

・森林認証紙、再生紙、非木材紙、間伐材紙、グリーン購入法対応紙などの環境に配慮した紙の販売を通して、社会に貢献。

・環境に配慮した紙の可能性を企業、団体などに向け発信。

2. 脱プラスチックを視野に入れた機能素材を積極的に市場展開。

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・紙は生態系に配慮した環境素材。その観点から紙の可能性を具体的な商品に出来る限り

反映させる。

3. 事業運営に関わる、エネルギー使用の効率化。

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・環境面でのコンプライアンスを徹底。

・共同物流などを積極的に利用することで物流の無駄をなくし、CO2排出量削減を視野に

入れた物流の効率化を実施。

・社内業務の効率化をはかり、省資源・省エネルギーを推進しCO2排出量削減に貢献。

4. 環境に配慮した物品購入、公正な調達の実施。

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・社内備品の調達に関しては、極力環境負荷の少ない物品を購入。

・事業運営における調達は、関連法規制を順守して公正な取引のもとで、環境負荷の少ない物品を購入。

5. 社会貢献を視野に入れた投資の実施。

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・環境問題や国際協力等、社会貢献に取り組む先への投資を優先的に実施。

6. パートナーシップの輪を広げる。

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・製紙メーカーをはじめ、関連企業、業界団体、デザイン団体、環境団体など幅広いネットワークとともに、パートナーシップの輪を広げていく。

・輸出入に関しては関連法規制を順守し、公正な取引を実施。

住所〒104-0041
東京都中央区新富1-7-4
株式会社ピーオーネット
電話03-3551-9341
FAX03-3553-0135

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