今春(2023年4月)、日本郵便グループの物流企業として誕生したJPロジスティクス株式会社。
新しい企業名からは剣道とのつながりをイメージしづらいですが、日本運送株式会社、フットワークエクスプレス株式会社、トールエクスプレスジャパン株式会社といった、かつての社名を見返せば、実業団剣道界屈指の名門チームであることが分かるはず。
長く関西地区を拠点に活動してきた剣道部ですが、5年ほど前より関東剣道部も本格的に発足。
自社道場にて充実した稽古を積んでいます。
同社執行役員であり剣道部員でもある西岡聡さんと貞島道浩さんに、企業の魅力、そして受け継がれる剣道への深い理解を尋ねました。
プロフィール
西岡聡(にしおか・さとし)
1965年和歌山県生まれ。和歌山東高校(和歌山)から国士舘大学へと進学。大学卒業後、旧社名である日本運送(株)時代に就職し、同社がその後、フットワークエクスプレス(株)、トールエクスプレスジャパン(株)と社名を変更して以降も勤続。現在のJPロジスティクス(株)においては常務執行役員・営業本部長として勤務している。自身の主な戦績は、全日本実業団大会優勝・2位、近畿実業団大会優勝などがある。剣道教士七段、剣道部では部長を務めている
貞島道浩(さだしま・みちひろ)
1970年東京都生まれ。立川高校(東京)から東京大学へと進学。大学卒業後、郵政省に入省し、民営化後の日本郵便では主として輸送業務を担当。現在はJPロジスティクスに出向中で、同社では執行役員・経営企画部長、剣道部では幹事を務めている。小学生時代からはじめた剣道は現在教士七段
創業は1938年。
連綿と受け継がれる物流と剣道の歴史
──今年4月からJPロジスティクスに社名を変更して新たなスタートを切りましたが、それ以前はトールエクスプレスジャパン株式会社として実業団剣道大会で活躍を収めてきた名門チームです。今回は同社の執行役員であり、剣道部員でもあるお二人に会社と剣道部の歴史、そして今後の展望などをうかがえればと思います。
西岡 会社の歴史としては1938年に創業された東播運輸株式会社がスタートとなります。その後、日本運送株式会社と社名が変更された際に本拠地である大阪府で剣道部が発足しました。以降も株主が変わるに従ってフットワークエクスプレス株式会社、トールエクスプレスジャパンと社名も変わり、今春よりJPロジスティクスとなりました。
事業内容もまた、社名が変わるのに伴って拡大してきて、今回JPグループの一員となったことで、日本郵便とのサービスや拠点での連携でお客さまの在庫管理や倉庫運営も幅広く提案できるようになりましたし、総合物流企業としてさらなる国際的な事業展開が望めるだけの環境が整いました。
まずJP(JAPAN POST)といえば基本的に知らない人はいないほどの知名度を誇りますから、その圧倒的なブランド力を得たことで交渉にも有利に働く場面が増えました。
──西岡さんご自身の入社の経緯についてもうかがいたいと思います。
西岡 私は国士舘大学の出身なのですが、就職にあたってはいくつかの民間企業にお誘いをいただいていました。そのなかでももっとも熱心に勧誘いただいたのがいまの会社だったんです。私が入社したのは日本運送時代でしたが、入社以前にすでに全日本実業団大会で4回の優勝を誇っていたこともあって、私自身も「剣道が強い会社だ」という認識はありましたし、和歌山県が故郷である私にとっては地元に近い大阪で勤務できるという点も大きな魅力でした。
──貞島さんはJPから出向中のお立場というお話ですね。
貞島 私はもともと郵政省に入って、民営化後の日本郵便に所属しています。日本郵便時代に輸送を担当していた関係もあり、子会社であるトールグループのトールエクスプレスジャパンに出向、それが2016年のことですからすでに7年が経過しましたね。
──お2人それぞれが感じる、このお仕事ならではの特徴を教えていただければ。
西岡 物流事業は社会インフラの要。世の中にとってなくてはならない大事な仕事であり、果たす役割が大きいサービス業だととらえています。
しかし、その一方で労働集約型産業であるがゆえの人材確保の難しさという部分があるのもまた事実。それは現在我々の業界が抱えている大きな課題のひとつでもありますね。
貞島 とくに私は外部から来た立場ですから、なおさらこの仕事の大変さ、そして社員のすばらしさを感じる場面は多いですね。
まずは「荷物を運ぶ」という作業の大変さ。例えば郵便事業のゆうパックであれば形状自体は小さいものが多く、荷物を決まったかたちのカゴ台車に入れてゴロゴロと引っ張って積めばいいのですが、弊社の取り扱う荷物はそれぞれ大きさや形状、重量も大きく違っていますし、それをトラックに載せるには、たとえば東北地区宛、関西地区宛と行き先ごとに荷物の大きさに応じてひとつひとつを分けなければならない。荷物の間に隙間ができればそれはコストになってしまいますし、積み方に偏りが出れば運転中に荷物が崩れてしまうこともある。ですから現場で働く人間たちは、荷物ひとつひとつの形状や降ろす順番なども考慮しながら、すべての荷物を積んでいかなければならないんです。
現場で働く人々が、荷物の大きさ、重量、積み下ろす順番の四次元の世界を計算した上ですばやくぴっちりと荷物を積み上げていく場面を目の当たりにしたとき、私は「これはプロの技だ」と大きな感動を覚えました。
──現在、西岡さんは営業本部長、貞島さんは経営企画部長としてご勤務されていますが、それぞれのお仕事の内容は?
西岡 営業部門は、企業としてはもっとも重要な収益に関わる重要な部署。私は現在営業本部長を4年ほど経験していますが、非常にやりがいと責任感のある仕事だと感じています。
貞島 経営企画部は実際に利益を生み出す立場ではなく、「利益を生み出すためにはどうすればいいのか」という知恵を出すことが仕事。いわゆる「知恵袋」のような役割にならないといけない部署だと私自身はとらえています。
部長として日頃から部署の人たちに伝えているのは「数字づくりだけに徹しちゃダメだ」ということ。経営企画部にいるのはそのスキルを買われて「一本釣り」されてきた人材が多いんです。それだけに、長く勤務してきたいわば「生え抜き」の人たちに対してただ数字を突きつけて話をしても、心に響かず浮いてしまうことにもなりますし、相手も殻に閉じこもってしまいますからその後の発展的な意見交換が望めなくなります。「どうしたら現場の人々が働きやすいのか」「どうしたら自分たちの努力が最終的にお客さまに届くのか」といった部分を軸にして知恵を絞っていくことが、私たちの仕事のもっとも重要なポイントだと考えています。
──もともと外部からいらっしゃった貞島さんだからこそ感じるJPロジスティクスならではの魅力を教えていただけたら。
貞島 私がまず感じたのはとても素直な人が多い企業だということです。「右に行け」と言われれば右へ、「左に行け」と言われれば左へと、迷うことなく突き進める人が多い。上の人が言うことを社員の誰もが真摯に受け止め、それをすぐさま実行に移せるという「素直さ」が私の眼にはとても新鮮に映りました。
一方で、社員が純粋であるということは裏を返せば施策を決める経営陣の責任が重大であるということになります。
そういう意味では、会社としてここまで長い歴史を積み重ねてきているわけですから、歴代の経営陣がいかにうまく意見をまとめて社員たちを導いてきたのか、その経営手腕が察せられますね。
関西剣道部に続き、関東剣道部も発足。
充実の環境でトップを狙う
外観のみならず建物内部の通路などにも多くの意匠が凝らされ(写真左)
シャワールームも完備(写真右)
──JPロジスティクスという企業を語る上で欠かせないのは、やはり剣道部の存在かと思います。
西岡 弊社は剣道経験者を積極的に採用しているわけですが、やはりその理由としては社内における剣道部出身者の活躍が大きいです。
まず試合戦績の部分で言えば、チームとしては過去5回の全日本実業団大会優勝経験がありますし、国際武道大学の前学長である蒔田実先生(範士八段)はかつて日本運送に勤務されていて、その当時に世界選手権大会で個人優勝されたというすばらしい経歴をお持ちです。
近年こそ日本一という戦績にはなかなか手が届きはしていないものの、第58回(2015年)・第61回(2018年)全日本実業団大会ではトールエクスプレス(本社)チームが3位入賞、2020年度、2021年度には関西剣道部所属の吉田真佐義が2年連続で全日本選手権大会に出場するなどの活躍を収めてくれています。
しかし、試合結果以上に重要なのは、剣道部員がみな部活動と仕事との両立をしっかりと実現してくれているということです。現在、取締役副社長の橋本(陽一)を筆頭に執行役員のうち3人が剣道部出身者ですし、5つある支社のうち3つの支社長が剣道部員です。さらに言えば、78ある支店のうち7支店の支店長も剣道部員であり、会社の重要なポストの多くを剣道部員たちが担っているんです。
──先輩部員たちの活躍が剣道経験者への信頼を厚くしているわけですね。剣道部は本社のある大阪で活動する関西剣道部に続き、現在は関東剣道部も発足して熱心に活動しています。今年3月には東京・荒川区の南千住駅近くにすばらしい自社道場も建設され、恵まれた環境のもとで稽古を積んでいます。
貞島 関東剣道部の発足については、やはり企業として永続的な人材確保の意味合いも大きいんです。剣道ができる勤務地が関西のみとなると、どうしても採用できる人材にも限りが出てくる。学生剣士の皆さんは近畿地区での活動を目標にしている人ばかりではありませんから、関東地区にもしっかりとした活動拠点が設けられたことは、今後の全国的な展開を視野に入れた上でも大きな出来事でした。
──現役部員たちもさることながら、指導陣のお二人もかなり稽古熱心とうかがいました。
貞島 私はそもそもトールエクスプレスジャパンへの出向の話があったとき、まず真っ先に頭に思い浮かんだのが剣道部の存在でした。「これはたくさん稽古ができそうだな」と(笑)。
──お二人の剣歴についてもおうかがいしたいです。貞島さんはどちらのご出身ですか?
貞島 私は東京都の出身で、小学生の頃に地元の日野警察署の少年剣道に通うようになりました。当時の稽古は厳しかったのですがどうにか続けて、立川高校(東京)でも剣道部に所属してその後は東京大学に進学しました。
東大でも体育会剣道部に入部はしたのですが、当時の剣道部の方向性に違和感を覚えて1年生が終わる時点で退部したんです。しかし、それで剣道がイヤになったのかと言えば実はむしろその逆で。「大学剣道部に残った人たちに負けたくない」という反骨心から、少年時代に剣道を教わった警察の先生にお願いをして、学生時代はずっと機動隊の朝稽古に参加させていただくようになり、すいぶんと鍛えていただきました。
社会人となり郵政省でも剣道部には所属。いま出向中のJPロジスティクスでは大阪と東京とを行き来して勤務しているのですが、仕事の移動に合わせるように、この日は関東剣道部、この日は関西剣道部と東西で稽古をしていますし、いまでもたまに郵政剣道部にも顔を出しています。
──和歌山出身の西岡さんはどのようなきっかけで剣道を?
西岡 もともと体が弱かったこともあって、小学4年生のときに体力をつける目的で剣道をはじめることになりました。新南少年剣道クラブというところで剣道をはじめて、小学生時代には全国大会で2位に入賞することができました。
その後、高校は和歌山東高校(和歌山)へと進学しましたが、当時の和歌山東はまだまだ駆け出しの存在。ちょうど私たちの代でなんとかインターハイ、国体などにも出場できるようにはなりましたが、私自身が本当に全国大会で活躍できるようになったのは社会人になってからですね。
──実業団剣士としての戦績を教えて下さい。
西岡 全日本実業団大会では優勝、そして2位という戦績を収めることができました。高校、大学で教えていただいた正しい剣道が下地にあったからこその結果ではありますが、社会人となって大きく変わったのは剣道への向き合い方でした。
会社から多大なバックアップをしてもらっているぶん、日頃の稽古、そして試合への取り組み方にも責任感が芽生えたような気がします。「なんとか会社の期待に応えたい」というそんな思いが試合での好結果に結びついたのだと感じています。
──JPロジスティクスの新たな取り組みとして、学生剣道大会への協賛がありますね。大会のライブ配信中に流れる動画の企業CMなど、剣道界では非常に珍しい斬新なアピール方法だと感じました。
西岡 剣道部員が活躍する企業としてなんらかのかたちで若き学生剣士たちを支援できないものかと考え、4年前から協賛をさせていただいています。
協賛にあたっては、学生剣士の皆さんに弊社の存在を知ってほしいという狙いがあるのはもちろんのことですが、我々の会社はやはり剣道を通じた人間形成をもとに成り立ってきたという歴史があります。いち実業団剣道チームとして剣道界に「恩返し」がしたいという思いも強かったですね。
貞島 剣道を通じて心身を鍛えてきた若い人材は我々にとっては宝のような存在です。動画CMもそうですが、弊社の存在をより多くの若い方たちに知ってもらうためにも、今後も企業側からの情報発信には力を入れていきたいですね。 弊社が目指しているのは剣道部としても企業としても「日本一」になること。もし、その目標に共感をしてくれる学生さんがいらっしゃれば、必ず活躍いただけると思っています。ぜひ弊社の門を叩いていただきたいです。
住所 | 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-9-2BIZCORE神保町7階 JPロジスティクス株式会社 |
電話 | 03-4212-8136 |
住所 | 〒541-0053 大阪府大阪市中央区本町3-4-8東京建物本町ビル7階 JPロジスティクス株式会社 |
電話 | 0671678707 |
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