オフィスのIT化、OA機器導入…総務の仕事は国香紙業へ!人を繋いで化学反応を起こす、剣道界のコネクター(國香利一 / 株式会社 国香紙業代表)

「KUNIKA」の看板をくぐりお店の中に入ると、そこは昔ながらの文房具屋さん。しかし、仕事内容を聞くと、「OA機器の導入」「事務所のIT化」「椅子の手配」など、町の文房具屋さんのイメージとは少し違ったキーワードが出てきました。しかも、「ホームページや名刺も作れるよ」と。

さらに、國香さんの周りの人のお話を聞くと、こんな声も聞こえてきました。

「國香さんのおかげで大口取引が決まった」
「苦しい時に新規取引先に繋いでくれた」

一体どういうことなのでしょう?その答えは、國香さんのユニークな仕事方法と、人との縁を大切にする人柄にありました。

プロフィール

國香 利一(くにか・としかず)
1971年神戸出身。育英高校から法政大学に進学。卒業後、三井木材工業に入社し、その後、家業である株式会社 国香紙業に勤務。現在は取締役を務め、文具・事務用品・OA機器・印刷・デザインなどオフィスに関わるあらゆる相談に乗る。

剣道は小学校の時に始め、インターハイ個人3位、団体3位、大学時には日本学生優勝大会優勝(団体)、国体や都道府県大会も出場するなど数多くの戦績を残している。段位は六段。所属道場は特になし。卒業校の垣根を越えた剣道部の同期会「平六会」で中心的な役割を務める。

文房具の販売からOA機器の導入、ワンちゃんの安全確保まで

──本日はお時間をいただき、ありがとうございます。昔ながらの文具屋さんでなんだか懐かしいです。

筆記用具、手帳、便箋、カッター、インク…なんでもありますよ。ちなみにこれは僕の愛車です。お客さんに呼ばれたらこのバイクで駆けつけます。

──事業内容について伺ってもいいですか?

文具・事務用品の販売や、OA機器の導入サポート、名刺やポップのデザイン・印刷などオフィス周りの仕事を中心に行なっています。

──OA機器や複合機まで取扱いがあるんですね。

はい、店舗での文房具販売のほかに、お客さんのオフィスに出向いて色々と相談に乗っています。うちのお客さんは個人事業主、法人、学校など様々。社外に総務部があるようなイメージですね。

総務の仕事は煩雑です。OA機器の導入一つとっても、何社かに見積もりを取らなければいけませんし、営業車が故障したら保険や修理の手続きが必要です。会社のホームページも、そもそもどうやって制作会社を探したらいいかわからないし、相場もわからない。こういった悩みを抱える方は少なくありません。国香紙業では、これらの仕事をまとめて引き受けているんです。

また、新たに起業する方のサポートも行っています。起業って、多くの方が初めての経験なので、何をしたらいいかわからないと思うんですよ。本業でただでさえ忙しいのに、他のことに気を取られてたらもったいない。なので、判子や名刺などの事務用品の準備やホームページ整備、税理士さんの紹介なども行なっています。

最近はテレワークの広がりの影響もあって、オフィス用の椅子を手配することも増えました。これはレーシングシートのトップブランド「レカロ」のオフィスチェアです。

自動車用シートで培ったレカロ独自のシート哲学をベースに開発されました。正しい着座姿勢をサポートしてくれて、腰痛予防や疲労軽減に繋がります。

他にも「コロナ対策で仕切りが欲しい」「事務所の換気を良くしたい」といったご要望にお答えして、フィルムパーテーションやサーキュレーター付きの大型扇風機をご用意することもあります。

──本当に色々なことをされているんですね。ちなみに、この写真はなんですか…?

これはお客さんの作業工事の現場に立ち会った時のものですね。ワンちゃんを飼っていらして、工事中ワンちゃんに危険が及ばないよう、安全を守りました。お客様のご家族ですので、これも大切な仕事の一つです!

自分の強みは?自問自答の末にたどり着いたのが「剣道」だった

──大学を出てすぐ家業に入られたのですか?

三井木材工業株式会社(現・ニチハマテックス株式会社)という建材メーカーに入社し、一年間だけ会社勤めをしました。剣道部もあったので実業団の試合にも出ましたよ。

もともと家業を継ぐ予定はなかったのですが、色々考えた末に戻ってきました。しかし地域の路面店や専門店が減るなかで、国香紙業も独自性を出さなければ生き残れません。

ある中小企業の勉強会で「御社のオンリーワンの強みは?」と聞かれました。でも、答えられなかったんです。「自分の強みはなんだろう」と長いあいだ自問自答しました。

そんな時にふと思いついたキーワードが「剣道」です。剣道の強いネットワークを持つ文具屋はうちしかありません。

──確かに、聞いたことがありません。

そのことに気づいたのが40代の頃です。ちょうど、同年代の剣友たちが会社での決裁権を持ち始めた頃でした。事業継承する剣友、起業する剣友も増えました。彼らと連絡を取り合うなかで、自然とネットワークが広がっていったんです。

特に、同期会である「平六会」の存在が大きいかもしれません。平六会とは、以下の条件を満たす剣道家の集まりです。

  • 平成6年度に大学を卒業した剣道家
  • 昭和46年4月から昭和47年3月に生まれた剣道家

大学の体育会でバリバリ活躍した選手もいれば、高校で剣道をやめた剣道家もいます。剣道歴や学校の垣根を越えて色々な人に所属して欲しいという願いを込め、できるだけ敷居を低くしています。

最近はコロナウイルスの影響で開催できていませんが、定期的に稽古会や飲み会を実施してきました。

育英高校剣道部で過ごした濃厚すぎる青春時代

──剣道歴について伺ってもいいでしょうか。

剣道は小学校の頃に始めました。高校は育英高等学校に進学し、本当に毎日毎日、剣道漬けの日々でしたね。

──どれくらい練習するのでしょうか?

平日は、夕方の4時から夜の9時〜10時くらいまででしたね。土曜日は昼まで授業を受けて、お昼ご飯を食べて夕方の5時〜6時くらいまで稽古していました。

育英の稽古では、精神的にも体力的にも凄く鍛え上げられるんです。稽古の半分くらいは先生のお説教で、常に強烈な圧を感じていました。おかげでちょっとのことでは全く動じないですね。忍耐力と精神力がついたと思います。

──先生は恐かったですか?

恐かったなんてもんじゃないですよ!!稽古よりも…とにかく…先生が恐くて……。練習試合をしても、他校の先生も厳しいので戦友みたいになるんです。先生に見つからないように色々みんなで悪さをしてました(笑)

でも結局、全て先生にはバレてたんでしょうね…で、怒られてた(笑)

今でもよく覚えているのが、高校3年生の玉竜旗です。剣道観が変わるくらいの悔しい負け試合がありました。帰りの新幹線が新神戸に着いた時、先生が一緒に泣いてくれたんです。普段は鬼のように恐ろしい先生が…。

でもそれは僕らのことを真剣に考えればこその厳しさで、とても愛情深い方でした。本当に、高校時代の日々は濃い思い出に溢れています。

──高校までの戦歴について伺ってもよろしいでしょうか。

子供の頃は、少年剣道の大会で優勝したり、関西で勝ったり…。あとはインターハイで個人・団体ともに3位になりましたね。

──ピカピカなご経歴ですね。

そんなことないですよ。インターハイは個人も団体も3位だったから不完全燃焼ですし。でも、優勝しても不完全燃焼かもしれないな。剣道は、ずっと正解がないものを求めていくようなものだから。

──高校までは関西で、大学は関東に行かれたのですね。

何校からお誘いいただいたのですが、法政大学にお世話になることにしました。

厳しい育英時代に対して、大学は学生主体の剣道で自主性を求められました。やらなくても怒られないけど、成績を残さなければ法政に来た意味がありません。最終的にはキャプテンをやらせていただき、全日本学生優勝大会(団体戦)で優勝しました。

法政に進学したことは結果として今の仕事にも活きています。東京が第二の故郷になりましたし、全国から集まった仲間が卒業後、また全国にかえったので、今では日本中に仲間がいます。これは僕にとって掛け替えのない財産です。

縁が深い東京に、2020年の年明けくらいから拠点を作ろうと準備していたのですが、コロナウイルスが蔓延してしまい残念ながら断念しました。

利害関係を超えて人を繋ぎ、化学反応を起こす

──仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

僕は、人との出会いを「縁」と思うか、思わないかで人間関係が全然変わってくると考えているんです。できるだけ人に会うようにしているし、「この人とこの人を繋いだら面白そうだな」と感じたら、紹介するようにしています。

仕事にしても、私生活にしても新しい出会いは本当に楽しいです。特に剣道関係の方は面白い人も多く、繋がりが広がると良い化学反応を起こしやすいと感じています。

例えば、育英の先輩に紹介されたスイスワイン輸入のヘルベティカ 森本さんが、新規のお客さんを探しているとのことだったので、老舗蒲鉾店『二方蒲鉾株式会社』とお繋ぎしました。

ワインと練り物は相性がいいらしく、2社は最終的に新しいプレミアムギフト商品を作ったんです。ヘルベティカさんは新規顧客の獲得、二方蒲鉾さんは新規商品企画になりました。紹介することで僕に直接的なメリットがあるわけではないのですが、輪が広がるのは嬉しいですね。

──縁を繋いだことが、いつか國香さんに返ってきそうですね。ちなみに、変な人に出会ってしまうこともありますか?

もちろんありますよ。性格が合わない人に出会うことも多々あります。連絡が来て、ご飯を一緒に食べるだけで終わることもありますし。でも、相性が合わないことや喧嘩をすることも一種の化学反応です。

人との縁をどう捉えて、どう大切にするか……これを強く意識しています。

想像もしない結果を生むこと、誰もやらない新しいことをしたい

──今後の展望について教えてください。

仕事も剣道も、これからも人を繋いでいきたいです。その結果、想像もしないような面白いコラボレーションが起こったら嬉しいです。

あとは、もっと剣道に関わることをやっていきたいですね。例えば、海外のサッカーやバスケのクラブチームみたいに、武道のクラブチームみたいなものを作るとか。

ある一定の年齢までは柔道・剣道・空手・少林寺など網羅的に武道を学び、その後一つ専攻させるんです。他の武道を学んだ経験は、きっと専攻する武道の理解につながるはずです。強い競技選手を育てる組織を作るのではなく、武道の概念を大切にした上で全く新しいことをやってみたいですね。

スポーツと武道って、相反するところがあるじゃないですか。でも、スポーツ競技としての剣道と武道としての剣道、どちらかに偏ったり、ごちゃ混ぜにするのではなく、調和させたいんです。

例えば、大人になってから剣道を始めた方が、ずっと競技剣道を極めてきた全日本選手権クラスの面を打ちたいと言っても、無理があると思うんです。もちろん、それを目指して稽古することは素晴らしいことですが、本当にそれって剣道を追い求める姿勢として本質的なのかなって。

勝った負けたではない、剣道の総合的な魅力を伝えていきたいんです。誰もやらないことをやりたいし、他の誰も思いつかないような新しいことに取り組みたい。それが当面の夢ですね。

──競技者として一流の環境で剣道をしてきたからこそ、勝ち負けの世界を超えて剣道の深い魅力を伝えたいと思われるのかもしれませんね。「剣道」をキーワードに人を繋ぎ、ユニークな仕事をする國香さんのお話、大変勉強になりました。ありがとうございます!

住所〒652-0046
兵庫県神戸市兵庫区上沢通2丁目1−2
電話078-511-7409

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