大学卒業後、USEN勤務を経て建設関連の会社に勤めた宮原さん。建設の業界について親身に教えてくれた技術者の方々に、不況が原因で退職を告げることになりました。
「お世話になった方々に、退職を告げるなんて耐えられなかった」
この出来事が原体験となり、建設現場の技術者の雇用を守るためにアールエフテクニカを起業します。「社員の雇用を守る」、その思想は同社が提供する和風居酒屋『残心』や剣道学生を対象にした企業説明会、『残心杯』などの社会貢献活動にも垣間見ることができます。
アールエフテクニカの事業内容から、新事業が生まれた舞台裏、そして剣道界への貢献活動について、あますところなくお聞きしました。
プロフィール
宮原 禎(みやはら・ただし)
1974年東京生まれ。正則高等学校から日本体育大学に進学後、株式会社USENに就職。その後、建設関連会社に転職し、2004年に株式会社アールエフテクニカ、2020年に合同会社アールエフクリアーレを創業。和風スポーツバー『残心』を東京・池袋に立ち上げるも休業を余儀なくされる。剣道に恩返しがしたいとYouTube企画『侍リーグ』を新たに立ち上げ、剣道の普及に取り組む。
剣道は小学校1年生の時に始め、小中高大と継続。正則高等学校在学時は、団体戦東京都ベスト8・個人戦ベスト16の戦績を残す。現在は大山青少年剣友会に所属。段位は六段。
株式会社アールエフテクニカ
https://rftecnica.com/
侍リーグ・公式チャネル
https://www.youtube.com/@samuraileagueofficial7217
建設のスペシャリストが所属。
都内主要ビルや工場設備の設計を行う
――― まずはアールエフテクニカの事業内容を教えてください。
宮原 建設サービス業の株式会社アールエフテクニカを経営しています。主な事業内容は、「技術者のアウトソーシング」と「プラント設計サービス」で、他に「フード事業」や「有料職業紹介事業」「派遣業」なども行っています。建設業全般ですね。一級建築士事務所も併設していて、図面だけ作成する仕事も請け負っているんですよ。仙台、東京、大阪の3箇所に拠点を持ち、現在社員は約250人です。
――― 技術者のアウトソーシングとは、どんなことをしているのですか?
宮原 「建設の派遣」というと、作業員みたいなイメージがあるかもしれませんが、弊社は施工を管理する人材を現場に送って仕事をしてもらっています。建築、設備、土木など、技術力の高い各分野のスペシャリストです。
――― これまでどんな建築に携わってきたのですか?
宮原 都内の主要商業施設、大型集合住宅ですね。プラント設計サービスでは、工場設備や施設設備の設計を行っています。具体的には大型の水処理場、水素処理場、火力発電所の設計などです。
他社との違いは、技術者の方々に登録してもらうのではなく、社員になってもらっている点です。派遣社員には「ライフスタイルに合わせて仕事を選ぶことができる」「自分の専門以外の仕事をする必要がない」「時給が高い」などのメリットがある一方で、社内での昇格や将来の安定性については物足りない部分があります。技術者を社員として雇用することで、できるだけ彼らの生活を守りたいんです。
現場の技術者の雇用を守るために起業を決意
――― 独立の経緯について教えてください。
宮原 私は小学校一年生の時に、父の勧めで剣道を始めました。中学校は残念ながら剣道部が廃部になってしまいましたが、そのぶん高校時代は部活に打ち込みました。そして、強豪大学で剣道を学ぶために日本体育大学に進学します。
大学4年間は剣道一色で、教員の道も考えましたが、ふとこれまでと違う道を歩いてみたくなったんです。そこで、教員や警察、刑務官などではなく、一般企業のUSENに入社しました。配属された部署は突撃部隊みたいなところで、営業の基本についてたくさん勉強させていただきました。3年ほどUSENで働いて、今度は建設系の派遣会社に転職したんです。
――― 業界がガラッと変わりましたね。
宮原 そうなんです。当時の私は『コーディネーター』という職種で、営業と技術社員の管理をする仕事をしていましたが、建設について右も左もわからない状態でした。現場の先輩方に業界について本当にたくさんのことを教えていただきました。
しかし、不況が訪れて彼らを解雇することになってしまったんです。お世話になった方々に「辞めてください」と告知するなんて、私には耐えられませんでした。
会社は、利益を守るために人件費削減、人員整理をしますよね。でも、その前にもっとできることがあるんじゃないかと思ったんです。
――― 例えばどんなことでしょうか?
宮原 施工管理の派遣は、ある一定の年齢になったら仕事を辞めてしまう方が多いです。そこで新たに雇用した若い子に目上の先輩が教えるサイクルを作ってはと考えました。アイデアに賛同してくれる会社があって、「その仕組みづくりをうちの会社やならないか?」とヘッドハンティングしていただいたんです。
当時同社で働いていた社員の方々からも賛同いただいて、一緒に転職して来てくれた方も多数いらっしゃいました。「2年でこれだけの利益を作ってほしい」と目標額が提示されたのですが、いざやってみると約束の4倍もの利益を計上することができました。

――― すごいですね!その会社で続けずに、なぜ起業に至ったんですか?
宮原 その後、私はゼネコンに参入したかったんです。会社を立ち上げた当初に思い描いてたサイクルをもっと強固なものにしたかった。しかし、経営陣は今のままでも儲かるからと現状維持を望みました。
確かにそのままでも利益は確保できますが、現場の方々の雇用を守るという当初の目的に立ち返ると、それが叶えられないように感じたんです。そこで、当時の仲間8人でアールエフテクニカを立ち上げました。
――― そんなアツい理由で会社が立ち上がったんですね。
宮原 事情を説明したところ、9割くらいの人が新会社に転職してくれました。それが18年くらい前ですね。本当にゼロからのスタートでしたが、工事免許を取って、実績を少しずつ作ってきました。

社員のために始めた剣道部が成長し、
新規事業のアイデアも生まれる
――― 居酒屋事業を手がけてこられましたが、いまは一時的にお休みをされていますよね?
宮原 もともとは、社員のために、会社でレクレーションを提供したいと思ったのが始まりです。最初はフットサルをしていたんですよ。私自身、大学を卒業してから仕事に追われ、すっかり剣道から離れていました。子供が剣道を始めるタイミングで私も再開し、たまたま社内に剣道をやっている仲間もいたので、剣道部を作ることにしたんです。実業団に登録すれば、会社のPRにもなるだろうと考えていました。
――― そんな経緯で剣道部が始まったんですね。
宮原 はい。まずは渋谷区の大会に参加するところからスタートしようということで、渋谷区のスポーツセンターで稽古を始めました。稽古の帰りに、居酒屋で飲むじゃないですか。その時に、防具を持っているとめちゃくちゃお店に嫌がられるんです。確かに迷惑ですよね。それで「防具を持ってきても飲める居酒屋があるといいよね。剣道家大歓迎のお店を作ったらどうだろう」という話になりました。これが和風スポーツ居酒屋『残心』のスタートです。工事はうちが安価で請け負うので一緒にやりませんかと、他の会社にも呼びかけました。

宮原 オリンピックの前には多くのご予約をいただいていたのですが、コロナで一旦すべてが無くなりましたね。そこからなんとか持ち直して継続してきたのですが、家賃のものすごい高騰を受けて一時的にお休みを余儀なくされています。とてもじゃないけれどお客様に価格転嫁できるレベルではなくて、一度休んで改めた方がよいと考えました。
しかし、この事業をきっかけに本当にたくさんのご縁をいただきました。ですから、売り上げとはまた別の恩恵があります。スタッフはウチの中で別の事業に携わっているので、やれるならやれるという状態にはあります。リソースはあるので、やりたいし、やらない手はないと思っています。
――― 剣道部を作ったことによる本業への影響はどうでしょう?
宮原 建設業剣道大会に出ることが最初の目標だったのですが、大会への出場が叶い、優勝もできました。剣道のご縁で人を紹介していただいたり、取引先との関係づくりにも役立っています。


剣道学生たちと企業をつなぐ。
長い社会人生活を見据えた窓口に
――― 素晴らしいですね。残心では学生向けに就職説明会もやっておられましたよね。
宮原 はい。これは私の肌感覚なのですが、剣道に打ち込んできた学生は就職活動が少し遅い印象があります。また、教員、警官、実業団の強豪企業など、選択肢がやや狭い傾向もあり、「警察官になること」「剣道が強い企業に就職すること」がゴールになりがちです。就職をゴールにしてしまったら、とてもじゃないけど長い社会人生活を走りきれません。そこで、企業や雑誌社にご協力いただき、剣道部員だけを対象にした面接会をやろうと考えたんです。ただ、もしこの面接会がきっかけで就職をしても、必ずしも剣道をしなくてもいいと伝えていました。

――― 「剣道をしなくてもいい」と言えるのはすごいですね。
宮原 他の競技と違って、剣道で食べていけるのはごく一握りです。でも、その割には辛い稽古を越えなければならない。同じくらい苦しい練習に耐えてきたのに、他競技は年俸何億、一方で剣道は普通の会社員です。仕事をする際に「剣道が義務」になったら、人によっては重荷になる可能性があります。だから、あくまで視野を広めるための「窓口」の立場でいたいですね。
――― そういう思いが『侍リーグ』の立ち上げに繋がったわけですか?
宮原 競技人口が人口減少の比例せずに下降している事は非常に残念に思っています。習い事の選択肢も増え、継続すれば職業とも成り得るものが人気となっています。剣道は精神性も含め素晴らしい武道ですが、一生懸命やってきたことを人生に活かしきれていないのではと感じていました。
継続ということをすごく大事に思っているのですが、そこにコロナ禍が来て、それ以降剣道の価値が低いなと改めて思わされました。例えば、剣道界の最高峰といえる警察の方々が「一切稽古するな」と言われて道場にも一切入れなくなりました。こんな競技は剣道だけでした。彼らですらそんな縛りを受けるのでは・・・
――― 確かにそうでした。いまもいろいろな制約が残っていますね。
宮原 そうですね。もちろんコロナへの対応は社会的要請の観点からも必要でした。ただ、剣道の競技人口はその後異常に減っていて、少子化ももちろんですが、都市部だと騒音問題などの制約が増えたこともあり環境的にも難しい状況になっています。
子どもが礼儀正しくなるといったイメージを持っていただいていると思いますが、指導に携わる方々もボランティアでプロでありません。習い事がたくさんある中で非常に難しい環境です。

宮原 このままではどんどん剣道人口が減少してしまうのではないか危惧しています。正しい剣道を伝えなければならないという気持ちはもちろん有りますが、伝える相手がいなくなってしまうのではと。
ですので、まずは剣道普及をしてとにかく競技人口を増やす事をしなければなりません。剣道が世の中の目に触れなければと考え2022年に『侍リーグ』を始めました。
――― 『侍リーグ』はユニークな剣道大会ですよね。
宮原 見てもらえることを第一に考えました。見てもらうことができれば、凄さも感じてもらえると思いテレビ局にも企画を持ち込んだのですけど、どこでも同じことを言われました。「ドキュメンタリーだったら追えるし面白い。でも試合は無理だろう」と。
理由は、顔が見えない、ルールがわかりづらい、ショー的にはできない、試合数が多すぎるということ。「そうか」って思ったのですけど、いまの子どもたちはYouTubeを見ているので、YouTube配信で、わかりやすい、見やすいのを作ろうと切り替えました。
実業団のリーグ戦をわかりやすく配信して見てもらう。企業にとっては宣伝効果となりリクルートにもなるという前提で、皆で予算を捻出して大会を開催するのはどうかと実業団チームに一社ずつ提案をして回りました。皆様ご賛同頂き無事大会開催になりました。
宮原 ルールは全て観ている方にわかりやすく、そして剣士に脚光があたるがコンセプトです。10人登録の7人制でフリーオーダー、審判技術の向上のためビデオ確認を取り入れました。配信においては解説収録を豪華解説陣にお願いしまして、わかりやすくスロー再生も含めて配信しています。
宮原 4年続けまして『侍リーグ』というのは普通にあるものだというレベルで認知はされたかなと思っています。剣道は勝手に人の試合を録画して勝手に流して収益を得ている人達が沢山見受けられます。非常に問題だと思っています。
侍リーグは肖像権についても署名を取り交わし、本人のリスクも予めヘッジしています。とにかくサステナブル。続けていくために、応援してもらえるためにということで、いろんなことを考えています。企業だけではなく、「なんのために剣道をやっているのだろうな」と思って辞めていく人が増えている中で、生活力をもって剣道を続ける人が増えるようにしたい。うちの会社にも剣道を通して入社する人がいますけど、社会人として自立できるように育てるということが重要です。
――― 最後に会社経営の今後について伺えれば。
宮原 これから先も、経営者として継続的に雇用を守りサラリーを向上させることが大切ですので事業をどうしていくか常に考えています。現状に甘んじることなくチャレンジしていきます。
応援、ご指導のほどよろしくお願いします。
それと自分を作ってくれた剣道に恩返ししたいという気持ちは変わっていません。
































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