海藻の力で人々の人生を豊かに。ヘルスケア・化粧品OEMのノウハウで海外展開(浅井信太郎 / 株式会社ステムズ 代表取締役)

営業職やコンサルタントの仕事を経て、株式会社ステムズを起業した浅井さん。ある開発者との出会いをきっかけに、海藻をベースにしたヘルスケア商品や化粧品の開発・OEMを手がけ、日本国内だけではなく海外にも進出しています。

2022年に19期目を迎え、事業規模も内容も発展を続けていますが、創業当初は資金繰りに奔走し「一時はどん底を味わった」と語ります。その時の経験から、仕事を選ぶ基準として「楽しそうか」「長くお付き合いできそうか」を大切にするようになりました。

本記事では、浅井さんが起業するまでに辿った道、仕事を通して出会った素晴らしい風景、長く続いてきた剣道の縁について、詳しくお話を伺いました。

プロフィール

浅井信太郎(あさい しんたろう)

1969年神奈川県出身。大学在学中に営業のアルバイトをして、社会の楽しさに目覚める。大学を中退後、先輩が経営する会社で営業や営業コンサルタントとして活動後、株式会社ステムズを創業。代表取締役を務める。ヘルスケア製品や化粧品のOEM、一次産業支援を行う。

剣道は小学校低学年の時に始め、高校卒業後は同期の稽古会で年1回のペースで継続。数年前に渋谷の剣道道場に通い始めたことがきっかけで本格的にリバ剣。剣道四段。
株式会社ステムズのホームページ
https://www.stem01.com/

社会の楽しさを知り大学を中退。開発者と出会い起業

──現在のお仕事を始めるまでの経緯を教えてください。

大学時代は、土木工学科に所属していました。でも、測量や研究をしながら「自分には向いていないのでは」と疑問に思っていました。

その頃、飛び込み営業のアルバイトをしていたこともあり、黙々と研究をするより人と会って刺激を受けたり、こちらからもエネルギーを与えるような、活動的なことの方が向いていると感じていたんです。そこで、思い切って中退の道を選びました。

──働く楽しさ、社会の楽しさを知ってしまったんですね。

そうなんです。その後、アルバイト先の先輩が創業した会社に営業として就職しました。そして30歳手前で別の先輩の会社に転職し、そこでは営業コンサルタントとして働きました。

──営業コンサルタントとはどのような仕事でしょうか?

中小企業を対象に新規営業の仕組み作りをしたり、営業に同行して新規営業のノウハウをお伝えする仕事です。中小企業の多くは新規営業に課題を抱えていることが多く、私たちの持つノウハウをお伝えしたり、仕組みを作ることで自走をサポートする仕事をしていました。

しかし、コンサルの主なアウトプットはレポートで、文章が苦手な自分としては、大変な部分がありました。もちろん、営業自体は大好きで、売上アップや仕組みが整うなど目に見える成果に充実感もありましたが…その頃から漠然と「ものづくりに携わりたい」と考えるようになりました。
そして、知人の紹介で海藻の研究者と出会ったんです。その方は、もずくを使ったサプリメントの開発をしていました。

──もずくですか。

はい、その方はオーストラリアの大学で海藻や海洋の研究をしてたそうで、晩年癌を患っていました。しかし、研究対象だったもずくを自分自身のために加工した健康食品を作り、QOL(※)をコントロールしていたのです。お話を聞くうちに私もその商品の可能性を感じるようになりました。

しかし、多くの人に広め合法的に販売するためには、工場できちんとした工程で生産しなければなりません。

※QOL:クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略で「生活の質」という意味

──工場で作らないといけないのですね。

そうなんです。自宅で作ったものを販売すると薬事法違反になってしまうんですよ。

そこで、会社を作り、友人知人、あらゆる人に出資のお願いをし、工場を作りました。最初の3年ほどは資金繰りに苦労しましたね。

本当にどん底を経験しました。子供の運動会を観に行っても、子供の出番が終わると無意識で資金繰りのことを考えているんです。

しかし、一度どん底を経験したおかげで、ちょっとやそっとのことでは動じなくなりました。おかげさまで、今年2022年に19期目を迎えます。

──会社名の「ステムズ」は幹(ステム)が由来ですか?

そうです。海藻など海は、生命の起源に関わるものです。皆さんの人生や美容を支える幹のような事業を作ろうという願いを込めています。

海藻のヘルスケア製品・化粧品のOEM。国内だけではなく海外展開も

──工場で作った商品はどこで販売しているのですか?

病院やクリニックです。最初はサプリメントを販売していたのですが、生産時に使う成分を有効活用するために、化粧品の原料と製品の開発を始めました。もずくや海藻は、高い保湿力があるだけではなく、紫外線から肌を保護する役割があり、化粧品との相性が良いのです。

あるとき、トライアスロン競技者と沖縄のライフセーバーの方にステムスローションをお使いいただいたところ、絶賛していただきました。海に入る前と入った後に塗ると、それまで紫外線を浴びて火傷のような状態になっていたのに、改善されたらしいのです。

さらに、筋肉へのマッサージ効果も実感していただきました。日焼け止めの中には珊瑚礁を傷つける成分を含んだものもありますが、ステムスローションは海藻由来なので環境にも優しいんです。とても喜んでもらい、「そんなに良いのなら大学で検証してもらって、エビデンスを得よう」と、大学の運動部に使用をお願いをしに行くことにしました。

会社から東海大学が近かったので飛び込み営業をして、陸上部の当時の箱根駅伝チームの選手たちに使っていただいた時期もあります。

当時スーパースターと呼ばれていた選手たちと仕事を通して関われて楽しかったですね(笑)大阪体育大学でライフセービングを専攻する方々にも使っていただいたんですよ。

その仕事をきっかけに化粧品のノウハウができたので、今度はOEMの仕事を始めました。今では化粧品関連の仕事の半分以上がOEMです。

──人のつながりを大切に事業を広げてきたのですね。

そうですね。OEMの仕事のおかげで付き合いの幅が増えました。現在は、ベトナムの一次産業支援も行っています。

──それは、どういった経緯で始めたのですか?

知人の紹介で、海藻を使ったサプリメント・化粧品をベトナムに提案しに行った際に、さまざまな地域を周りました。「もっと根本的に、ステムズの技術をお役立ていただける機会はないだろうか」と考え、現地の人々が抱える課題をできるだけヒアリングしたかったのです。

そして、エビの養殖産業が抱える課題に出会いました。ベトナムのエビの養殖産業では、「エビの病気が多い」のです。

課題を深く知るためには、現地の生産者の方々のお話を聞くのが一番です。メコン川の奥地に入り、実際にお話も聞いてきました。

──現地の方々に馴染んでますね(笑)ヒアリングの結果、どのような解決策を提供していますか?

主に、エビや魚のエサに乳酸菌・独自のミネラルを配合し、体質改善や水質改善を行っています。他にも、日本の中小企業が持ついろいろなノウハウで、生産性向上の提案を行っています。あまり知られていないかもしれませんが、日本の中小企業や個人研究者は面白いノウハウを本当にたくさん持っているんです。

一次産業支援を通してベトナムに行く機会も増え、最近では、ベトナム国内でのサプリメントのOEMも始めることになりました。

仕事を受ける判断基準は「楽しそうかどうか」

──仕事がどんどん広がっていて、すごいですね!

僕、面白そうだと感じた話にはできるだけ乗っかるようにしているんです。仕事をする判断基準は楽しそうかどうか仕事仲間としてお付き合いが末長く続きそうかどうかですね。

ベトナムの案件も、知人に「ベトナム行ってみますか?」と聞かれ、面白そうだから行ってみようと即決しました。

──なぜそう考えるようになったのですか?

資金繰りの厳しい時期を経験したことが大きいです。当時はとにかく会社を続けることに必死で、いろいろな人に資金を無心しました。

でも、長く付き合いが続くのは、お金以上の関係がある方々です。付き合ってて楽しい人はずっと良い関係が続いていきますし、何よりお互いハッピーです。その基本を忘れて金に走ると、上手くいかないと痛感しました。
一緒に仕事してて楽しい人と、楽しいことをしてたら、お酒も美味しい。悪いことが何一つないと気づいたんです(笑)

──確かにそうですね!

あとは、僕は美味しいものが大好きなんです。

仕事の関係で大阪、福岡、沖縄によく行きます。特に海藻の仕入れは沖縄なので、漁協と提携して一次加工の仕事もしてます。現地の漁師さんとも仲良くなりました(笑)

最近では新たな事業のためにアイヌのおばあちゃんとキノコを採りにいきました。

「サルノコシカケ」と呼ばれるキノコから有効物質を抽出してサプリメントにするんです。

アイヌのおばあちゃんたちは、キノコの生息地だけではなく熊の生息地もよく知ってるので、ヒグマに遭遇しないように安全な道を案内してもらいました。

高校卒業後、年一度の同期会で剣道を継続。渋谷の道場で本格的に再開

──剣道歴を教えていただけますか。

剣道を始めたのは小学校低学年の頃。喘息持ちで、おじさんに勧められて始めたんです。中学校・高校2年生まで部活で続け、一度中断しました。その後、社会人になってから高校の同級生たちに誘ってもらい、年に1回くらいのペースで細く長く続けていました。昭和61年に高校を卒業した人たちが学校を超えた同期の稽古会を企画してくれて、49歳までは年1回のペースで続けていました。

数年前、会社が恵比寿にあった時に知人に渋谷の道場に誘ってもらい、木曜日の夜だけ稽古に参加するようになりました。

その道場は火曜日に朝練(7時から8時)があって、ある時参加したらすっかりハマってしまって。それ以来、都合がつく時はできるだけ稽古に参加するようになりました。

──大人になってから、剣道のどんなところを魅力に感じますか?

現在所属している道場の先生方に、所作から着装まで、全て最初から教えていただきました。大人になってから注意していただく機会はなかなかないので有難いですね。特に経営者は、怒られる機会もほとんどないので…。

稽古では高段者の先生の打倒部位に触れることすらできないのですが、それすらも楽しいです。

──打てないことすら楽しいと。

はい、32年もほとんど稽古してなかったので、あたる方がおかしいんですけどね(笑)自分の剣道を検証し、攻め方を考えるのはとても楽しいです。

また、道場での出会いが仕事に繋がったこともありました。皆さんお仕事も多種多様なので、自分が身を置く業界内では築くのが難しいネットワークができる点は本当に有難いです。

剣道界は狭いですし、稽古でしょっちゅうお会いするので絶対に裏切ることはできません。仕事でも真剣勝負ができる剣道の仲間の縁は素晴らしいものです。

ノウハウを活かしてOEM事業のさらなる拡大を目指す

──今後の展望を教えてください。

今後もOEMに力を入れていきたいです。

商品企画からパッケージまで対応するノウハウが弊社にはあります。地元の材料を使ってサプリメントや化粧品を作りたい方はぜひご連絡ください。

また、先ほどお話ししたように、ベトナムに取引ルートができましたので、現地のニーズを汲んだ商品を作って販売していきたいですね。海外でもOEMに挑戦していきたいです。ハードルはありますが、可能性のある分野だと考えています。

──剣道に関してはいかがでしょう。

昇段審査に向けて引き続き稽古を重ねていきます。同級生の友達がみんな七段になり始め、なかには八段の先生もいてカッコよくて。僕も彼らを見習ってがんばります。

剣道家の方々は、仕事も剣道も真剣に取り組んでいらっしゃるところが本当に素晴らしいと思います。会社を経営する方も多く、剣道の稽古が終わってから仕事の話ができるところも楽しいです。

お互いの事業がつながり、縁が広がっていった時も、日頃の剣道のつながりがあるので「下手な人は紹介できない」と緊張感があります。今後も、剣道の稽古だけではなく、切磋琢磨しながら支え合っていけたらいいですよね。

──本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

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