かに煎餅、フルーツ大福、アーモンドバターなど、お菓子好きであれば夢中になること間違いなしの商品を提供する角谷製菓。
もともとはお餅屋さんですが、四代目の角谷 隆政さんの代で製菓づくりを始めます。
「家業を継ぐつもりはなかった」と語る角谷さんは、未経験で現在の仕事を始め、新たなお菓子を次々と開発。国内・海外で数々の賞を受賞し、さらには地域を巻き込んだ大規模なお祭りの実行委員も務めます。
贈答にも自宅用にも最適な魅力的なお菓子と、それらができるまでの経緯、今後の展望について伺いました。
プロフィール
角谷 隆政(かくたに たかまさ)
1973年生まれ。兵庫出身。 豊岡南高等学校卒業後、産能短期大学に進学。株式会社かに道楽に勤務後、角谷製菓株式会社に入社。現在、代表取締役を務める。
剣道は小学校2年生の時に始め、小中高と継続。大学卒業後、実業団剣道大会にも出場。剣道二段。
ホームページ
http://www.kakutani-seika.co.jp/
かに煎餅、フルーツ大福、アーモンドバター…心躍るお菓子を提供
──事業内容について教えてください。
製菓の製造・卸売・販売、OEM商品制作を行っています。

──かに煎餅、フルーツ大福、アーモンドバター、ラスクをいただいたのですが、どれも最高でした。
かに煎餅『かなめ』は、素材へのこだわりと手間が特徴です。生地の半分以上にずわい蟹の身を使用し、一度焼きをした後、10日間の熟成期間を経てから二度焼きを行います。
商品名は、扇の止め具である「かなめ」から命名しました。手に取られる皆々様の慶びをまとめる品になるようにとの願いを込めています。贈り物にぴったりの商品です。

──いちご大福は、形もカプセルのパッケージもとても可愛らしいですね。
ありがとうございます。フルーツ大福は、旬の素材と手作りの工程にこだわりがあります。フルーツの下処理、餡と餅の配合、包みと形成…五感で一つ一つ確認しながら、心を込めて作っています。
餅から生まれた苺大福「苺太郎」は、アンテナショップ「角谷藤兵衛 来日直売店」でのみの限定販売ですので、近くにお立ち寄りの際はぜひご賞味ください。

苺大福「苺太郎」
──お土産にアーモンドバターを買ったのですが、こちらもとても美味しいです。
角谷製菓のアーモンドバターは、アーモンドの風味と食感、発酵バターの風味とコクが特徴です。パンに塗ってそのまま召し上がっていただいても美味しいですし、トースターでこんがり焼くと香ばしさが増します。ちなみに、アーモンドバターは姫路のローカルフードなんですよ。

──今回の取材を本当に楽しみにしていて、お土産にさらに焼き菓子も購入しました。
ご購入いただきましたのは、2021年に開発した焼き菓子「幸玉(ゆきだま)」ですね。菓子業に携わってきた感謝を込め、神社に奉納するために作ったお菓子です。
──フランスの焼き菓子『ブールドネージュ(スノーボール)』に似ていますね。
はい、「雪玉」の「雪」を「幸」にかけて「幸玉」と名付けました。お口にしてくださった方々が、幸せを感じていただけるよう願いを込めています。
原料に使用しているのは、神様が持ち帰ったとされるタチバナの実や、コウノトリが育むお米の米粉です。

──OEMではどんなことをされているんですか?
弊社がOEM商品としてご提供する商品は「煎餅」「杵つき餅」「おこわ」「わらび餅」「大福」「フルーツ大福」などです。
上記の他にも、弊社の製造工程で製造できる商品であれば、ご提案可能です。理想のお菓子について、思い描くことは人それぞれです。弊社で長年培ってきた経験と技術で、「少し甘みを抑えたい」「もっとやわらかくしたい」などお客様のご要望を叶えるお手伝いをいたします。
餅屋の四代目が始めた製菓事業。国内・海外で数々の賞を受賞
──角谷社長は四代目とのことですが、昔から製菓づくりを生業にしていたのですか?
弊社は、もともと餅屋で、製菓づくりを始めたのは私の代からです。
初代の角谷潔が戦後間もない頃、餅米を使って「あられ」を作ったことが始まりで、人々の暮らしが安定するに従って、店舗にも商品を卸すようになりました。
二代目の角谷宗幸は株式会社を設立し、取引を全国に拡大。素材にこだわり、審査条件の厳しい料亭や旅館にも餅とおこわを卸すようになりました。そして三代目である父・眞澄はさらに味を追求しました。
──角谷社長は、大学卒業後すぐに家業に入られたのですか?
東京の産能短期大学に入学し、卒業後は株式会社かに道楽に就職しました。大学在学中に横浜店でアルバイトをしていたことがきっかけで、入社後は大阪本店に勤めたんです。その後、東京の店舗に転勤となり「かに道楽剣道部」として実業団にて剣道を再開しました。
家業に入ったのは、29歳の時です。継ぐつもりはなかったのですが、父が他界したことがきっかけで地元に戻ってきました。

──ちなみに、剣道はいつから始めたんですか?
小学校の2年生の頃に両親の勧めで強制的に始めました(笑)子どもの頃の稽古は本当に厳しかったですが、がむしゃらに打ち込んでいましたね。稽古はしんどいけれど、その分、勝った時の喜びは何事にも代え難いものでした。その嬉しさ・楽しさを求めて続けていたと思います。
豊岡に戻ってきてからはすっかり剣道から離れてしまいました。でも、いまでも剣道関連の方々とはつながりがあります。
──剣道をやってて良かったことはありますか?
やはり礼儀ですね。どこに行っても役立つことなので、私の子どもたちには小さい頃から剣道を習わせています。


──豊岡に戻って、いきなり家業を継ぐことになったんですか?
はい、最初の3年くらいはとても大変でした。餅の作り方も製造の仕方も、取引先にどういったところがあるのかも分からない状態からスタートしたので…。
父の代までは、料亭・旅館に餅を卸すメーカーとして商いを行っていました。取引先も充分にありましたので新規で営業をする必要はありませんでしたが、外食産業は波が激しい業界です。これから先を考えた時に、新しい取り組みをしないと生き残っていけないのではと考えました。
──数々の賞を受賞していますよね。
かに煎餅『かなめ』は、ベルギーの品評会「iTQi 優秀味覚賞」の受賞を皮切りに、モンドセレクションでSILVER、「お伊勢さん菓子博」2017年 外務大臣賞を受賞するなど、有難いことに国内だけではなく海外でも評価していただいています。



菓子の神・田道間守菓祖神を祀る街で地域おこし
──新事業として製菓づくりを選んだのはなぜですか?
実は、この街全体がお菓子の街なんです。これまで培ってきた餅屋の技術を生かしてお菓子づくりを始めることは、地域への恩返しにもつながるのではと考えました。
豊岡市には、お菓子の神様「田道間守命(たじまもりのみこと)」が中嶋神社に祀られていて、毎年「菓子祭例大祭」が開催されます。但馬地域の菓子店が出店する『菓子祭前日祭』には、2万人もの人が訪れるんですよ。
私はこのお祭りの実行委員をやらせていただいています。コロナの影響でここ数年は開催できませんでしたが、2022年に規模を縮小して3年ぶりの開催が実現しました。

──地域貢献もされてるんですね。新規事業は、自社にどんな影響を起こしましたか?
4人ほどの社員が16人に増えました。取引先も拡大し生産量も増えたので、新工場も作ったんですよ。
──すごいです!工場の他に、直営店舗もお持ちですよね。
はい、弊社は創業昭和21年で、何十年もこの地で商いをしているのに、ある時「工場はどこにあるの?」「何を作っているんですか?」と地元の方に聞かれたんです。「こんなにも知名度がないのか」と大きなショックを受けました。
なんとかしなければと危機感を持ち、考えた末に「みんなから見えるよう、直売のお店を作ろう」と思ったんです。2012年に直売所を作り、製菓を地元の方々にもアピールしながら、同時に卸先も増やしていきました。

──直営店があるエリアは、とても趣がありますね。
この辺りは温泉街なので、ぜひご旅行も兼ねて豊岡に足を運んでいただきたいです!

地域を支えるような商品づくりを目指して
──今後の展望を教えてください。
名古屋のえび煎餅「ゆかり」のように、「豊岡に行ったらこのお菓子を買って帰ろう」と自然に言っていただけるような立ち位置を目指したいです。ただの観光土産、ビジネス土産ではなく、商品として地域を支えられるような商品を作っていきたいんです。
──海外でも認められていますし、その日は近い気がします。
有難いことに、日経プラス1の海鮮煎餅ランキングで「かなめ」がTOP10に入ったこともあります。地道に商売を続けて、認知度を高めていきたいですね。


──製菓を作る上でのこだわりはありますか?
いまは多くのことが機械でできる時代ですが、職人技を残していくことが大切だと考えています。弊社のお菓子作りも、機械で行っている部分もありますが、作り手が肌で感じることを大切に、できるだけ手作業を残し、最終確認は五感で行うようにしています。
あとは、旬の素材を使うこと。例えば、フルーツ大福の『苺太郎』には、特大サイズの旬のあまおうを使用しています。その時期にしか食べることができない素材を使った製菓を提供しつつ、かに煎餅『かなめ』など日持ちする商品も提供していきたいですね。
──甘いものが大好きな私としては、大満足な取材でした。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
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